「クルマの純正サスペンションを交換したい!」というオーナーは多いだろう。そこで、今回は、純正の足回りをより快適にし、乗り心地よくする方法を先代スバルBRZのオーナーである筆者の実体験とともに解説していく!
文/高根英幸、写真/高根英幸
■先代スバルBRZのサスペンションを交換!! 乗り味の改善にチャレンジ!!
「車高を下げてスタイリッシュにしたい」、「グラグラとロールするハンドリングを落ち着いたスポーティなモノにしたい!」 など、クルマのサスペンションを交換したくなる理由は人によって、車種によって色々とある。
けれども乗り心地が悪くなると家族の不満が高まる、とか快適性を犠牲にしたくない、という人も少なくない。せいぜい純正ダンパーにローダウンスプリングを組み込む程度、それ以外は乗り心地が悪くなる、と思っているのではないだろうか。
サーキットを走るようでなければ、車高調整式サスペンションなど必要ない、と思っている人は多いようだ。しかしスプリングを幅広い仕様から選べ、減衰力や車高も微調整できるものであれば、如何様にも足回りを仕立てられる。
例えばシビックタイプRなど、ノーマルでもハードなサスペンションとなっているクルマのオーナーの中には、ドイツのニュルブルクリンク北コースで鍛え上げたシャーシに惚れ込み、その乗り味の硬さも持ち味と思って気に入っている人もいる。それならいいが、毎日の通勤などで使っていたり、週末の買い物で家族に不評という人も多いのではないだろうか。
けれどもキチンと理解してパーツを選択し、適切なセッティングを施せば純正の足回りよりも自分好みの乗り味に仕立てることも可能なのである。
今回、筆者は先代のスバルBRZでサスペンションを交換して乗り味の改善を図ってみた。その一部始終をご紹介しよう。
■副筒式で全長調整式の「TEIN FLEX A」をセレクト!! どうなる?
昨年、免許取得した初心者である長男の運転練習とクルマいじり趣味を両立させるべく、先代のスバルBRZを手に入れたのだが、首都圏を走らせて感じたのは「純正サスペンションでは乗り心地が悪過ぎる」ということだった。
スポーツカーはステアリング操作に対する反応の鋭さと加減速に対する安定感を求められるのが一般的で乗り心地は二の次であっても、せっかくの低重心と高剛性を活かしきれていない印象だ。
コーナリングや加減速でもクルマの無駄な動きが少ないのだから、もっとサスペンションを動かしてやっても普通の走りには影響は少なく、しなやかな乗り味に仕立てることも可能なハズなのだ。
サーキットでベストタイムの更新を目指す訳ではなく、あくまで公道でMTを操って気持ちよく走りたいだけなので、ここまでサスペンションが動かない足回りが必要な訳ではない。そこでサスペンションを交換し、より自分好みの乗り味に近付けることにしたのだ。
ここでスポーツカーのオーナーであれば予算に限りはあっても、できる限り高性能なスペックのサスペンションを選びたいと思うかもしれないが、それが必ずしも正解とは限らない高性能なサスペンションがすべてのユーザーに最適とは限らないのだ。
例えば高性能なダンパーで知られる単筒式は、ガス室を末端に設け高圧の窒素ガスでダンパーオイルを加圧することにより安定した性能を発揮するが、フリーピストンのフリクションなどもあって乗り心地が硬めになりがちだ。
いっぽう、純正のダンパーにも採用される副筒式は、窒素ガスを封入しているがオイルと一緒に注入されているため低圧で、オイルへの影響も少ないがフリクションは少ないのでその分、同じ減衰力でもダンパーが動きやすい。
フリクションも減衰の一部として考えることもできるが、ゆっくりとした動きではフリクションの影響が大きいのに対して、早い動きではフリクションは減衰にはあまり効かない。つまり普通に公道を走る使い方ではフリクションは乗り心地を悪くする要因になってしまうのだ。
そこで選んだのは日本が誇るサスペンションメーカー、TEINのFLEX A。これは全長調整式の車高調で福筒式のダンパーを採用。フルバンプ時に突き上げを防ぐHBS(ハイドロバンプストッパー)を採用しているのが特徴だ。
BRZ用のFLEX Aを購入し、正月休みにガレージで純正サスペンションと交換した。車高は純正より20mmダウンにとどめてストロークを確保し、減衰力も16段調整のうち最も柔らかいところから4段ほど上げた状態で走行を始めた。
ダンパーやバネが馴染んできたところでセッティングを調整し、現在は、フロントは6段目、リアは5段目で落ち着いている。交換前は首都高速では道路のジョイント(継ぎ目)を走り抜ける際には、ジョイントの前後にできた凹みとのギャップで結構な衝撃を伝えてくるものだったのが、断然マイルドで落ち着いたものになった。
一般道でも荒れたところを走り抜ける際の快適性は断然高まった。さらにタイヤの接地性も向上して空気抵抗も減ったせいか、燃費も1割ほど伸びたのだ。
今後はバネレートの見直しやステッピングモーターによって走りながら車内から減衰調整が行えるEDFCを装着したりと、さらなる熟成や進化を楽しむつもりだ。
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