大きな駅などでよく見かける、バス停の場所を示す案内表示には、バスの描かれたアイコンが添えられている。いつ頃から始まったのだろうか?
文・写真:中山修一
パブリック・インフォメーション・シンボルのはじまり
案内表示は文字で説明してさえいれば最低限機能する。とはいえ、その場所を訪れるのは書かれている言語が読める人だけではないし、瞬時に文字を見て理解するのが困難な状況も考えられる。
そこで、誰が見てもそれが何を案内しているのか判断できるよう、説明文字を簡略化したイラストに置き換えるアイディアが生まれたのは、20世紀に入ってからのヨーロッパだった。
そのようなイラストを「ピクトグラム」とも呼ぶが、元祖的な存在にして最も有名なものは道路標識だろう。交通法規以外でピクトグラムが世界で初めて活用されたのは、1964年の東京オリンピックと言われる。
その後、街中の案内表示にもピクトグラムが添えられるようになったが、場所ごとに図柄がバラバラであったため、国の主導で共通化が図られた。
1999年に検討が始まり、2001年に交通施設、観光施設、スポーツ施設、商業施設等での使用を目的とした125項目の「標準案内用図記号(Public Information Symbols)」が決定した。JIS規格化しており、細かく言えばJIS Z 8210だ。
改定が繰り返され、2021年版では165項目にまで増えている。また、商標や意匠として登録しない限り、誰でも自由に標準案内用図記号を使用して良いことになっているのもポイントだ。
バスのピクトグラムってどんなの?
バスのピクトグラムは当初から用意され、標準案内用図記号の、航空機、鉄道、船舶、ヘリコプター、タクシー、レンタカー、一般車、自転車、レンタサイクル、ロープウェイ、ケーブルカーなどと同じ「交通施設」のカテゴリーに含まれている。
1扉仕様のバス車体のドアがある側を簡略化させた、路線車にも高速車にも見えるが、確実に「バス」だと分かる明解なデザインが特徴。窓の数は4つ、白と黒が基本色だ。
ピクトグラムには推奨度があり、バスをはじめとする交通施設カテゴリーは「B」=図形を変更しないで用いることを推奨、が該当する。
各種ピクトグラムの使用規定は極端に厳しいものではなく、諸条件のもとで色彩を変更したり、諧調反転や左右反転(左ハンドルになってしまうが)して用いるのも可能だ。