道路のように車線も案内板もない海。いったい艦船は、どのように航海を行うのか?

■船位を決定する方法

 艦船がどの航法により航海を行うとしても、まず船位を決定できなければならない。これは緯度・経度で表すか、特定地点からの方位、距離などで示される。船位を決定する方法には以下のようなものがある。

六分儀を操作するアメリカ海軍の水兵。六分儀は物標の高低や夾角などを測定するための航海機器で、天測でも使用される。航法装置が大きく発達した現代でも、各国の海軍で航法の基本として六分儀の扱いを訓練する
六分儀を操作するアメリカ海軍の水兵。六分儀は物標の高低や夾角などを測定するための航海機器で、天測でも使用される。航法装置が大きく発達した現代でも、各国の海軍で航法の基本として六分儀の扱いを訓練する

(1)陸測による船位の決定法
 陸上の物標の方位、距離から「位置の線」を決定する、2つの物標の水平夾角から「位置の線」を決定するなどの方法で「船位」を得る。「位置の線」とは船位がその線上に存在する直線または曲線のこと(Position Line)。2本以上の位置の線の交点が船位になる。この方法は沿岸海域を航行する際にしか使えない。

(2)天測による船位の決定法
 太陽や月、恒星など天体の位置を観測して船位を決定する方法。原始的な方法だが航法の基本であり戦闘などで航法装置が使用できなくなった場合に備えて、各国の海軍では今でも訓練を行っている。

(3)電波による船位の決定法
 地上に設置された無線航法支援設備から発信される電波を利用して船位を決定する方法。電波方向探知機を使う方法からロラン、デッカ、オメガがあったが、これらは今日では使用されていない。

(4)衛星による船位の決定法
 航法衛星から発信される信号電波を使用して船位の決定を行う方法で、一般的には航法衛星システム(NSS:Navigation Satellite System)といわれる。最も有名なのがアメリカが開発したGPS(Global Positioning System:全地球位置把握システム)。

(5)慣性航法装置による船位の決定法
 慣性航法装置は外部からの航法支援装置による支援を必要とせずに船位が決定でき、自立航行を可能にする。主に航空機や潜水艦で使用され、水上艦艇ではあまり使用されない。

■GPSとはどんなもの?

 軍民間を問わず最も使用されているのがGPSだ。GPSは、それまでの自己の位置を決定するという作業を大幅に軽減してしまった。カーナビやスマートフォンにも使用されており、いまやわれわれの日常生活にも浸透している。

 GPSは、いつでもどこでも高い精度で自己の位置を知ることができる、GPS衛星(航法衛星ナブスター)を使用した航法システムである。システムは軌道上に配置されたGPS衛星と、それぞれの衛星が発信する信号情報を衛星に送りコントロールする制御局、発信する信号情報が正確であるかどうかを監視するモニター局で構成されている。

 航法データとなる信号を発信するGPS衛星は約30機、高度20200kmの衛星軌道上に配置(各衛星は赤道から55度傾斜した軌道傾斜角を取り、12時間で地球を一周するように配置)され、各衛星は識別信号、宇宙空間に置ける現在位置、原子時計による現在時間などの情報を発信し続けている。利用者は、GPS受信機で4つの衛星から発信される情報を受信して自己位置(緯度・経度の座標、時間)を簡単に求めることができる。

 GPS衛星が最初に打ち上げられたのは1978年2月のこと、最初のブロックIシリーズから現在のブロックIIIシリーズまで打ち上げられている。

 1991年の湾岸戦争では、地形の目標となる指標が何も無い砂漠でもアメリカを中心とする連合国部隊がGPSを使い自己位置を把握、縦横無尽に活躍したことでもお馴染みになった。GPSを使用すれば友軍の位置や敵部隊の位置を同一座標系の地図にリアルタイムで表示することも可能なので、作戦の立案等で多いに役立った。

 GPS衛星の発信する信号電波には、高い精度を持つ軍用のPコードと誤差データを加えて精度を落とした民間用のC/Aコードがあったが、2000年代に入ってC/Aコードから誤差データを加えるSA操作が解除され精度があがっている。今日では航空機から艦艇、砲弾までGPSを利用しており、軍では当然として、民間でもに欠かせない航法装置になっている。

次ページは : ■日本独自の衛星測位システム

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