あの名モデルたちを世界遺産に!? スバルマニアが選ぶ伝説級「スバルの軽」3選

■今日の衝突安全性の高さの礎となった傑作車

【スバル360】

スバル360は日本の自動車史に名を残す名車で、スバルと聞けば、古くからのファンはこのモデルを思い浮かべる
スバル360は日本の自動車史に名を残す名車で、スバルと聞けば、古くからのファンはこのモデルを思い浮かべる

 スバルが最初に作った傑作軽自動車で、開発をまとめたのは自動車界の偉人・百瀬晋六氏。日本機械学会から「機械遺産」として登録されるほどの名車たらしめた要点を簡単にまとめると、戦前から戦中にかけてアジア最大の軍用機メーカーとして名を馳せた中島飛行機時代の設計思想が継承されたことが大きい。ここでは、スバル360最大のトピックであるモノコックボディ作りに焦点を絞って紹介しよう。

 中島飛行機は戦後すぐに解体され、それぞれ民需企業として再建。そのうちのひとつ富士産業は、戦闘機作りに代わる会社の新たな生業としてバスの生産を開始する。大きな鉄板を加工して筒状の車体を作る基本的な設計は飛行機の機体作りとよく似ていたため、飛行機作りの技術が応用できた。

 この富士産業の流れを組む会社が吸収合併されてできたのが今のSUBARU(旧社名:富士重工業)で、シャシーレスのフルモノコック化したバス車体作りは、のちのスバル360の開発に活かされることになる。

 創立直後の富士重工業は、元航空機メーカーということで、東京帝国大学の航空学科を卒業した流体力学や構造力学に精通した人材に恵まれた。欧米車のコピーではなく、国内では前例のないフルモノコック構造としたのは航空機の機体作りからの発想。航空機作りの経験と実績から、自動車でもフルモノコック構造を採用するのは必然的な流れだったのだ。軽量化と強度、耐久性の確保で、小型の乗用車にこれ以外の選択肢はありえないという結論にいたる。

 路面からの入力を太くて頑丈なフレームで支えるのではなく、応力集中で逃げるという発想は元航空機メーカーならではのものだ。0.6mmという、当時としてはありえない薄い鋼板を車体構造に使えたのは、航空機用の鋼板作りの職人がまだ居たことと、タマゴ型のフォルムの採用によるところが大きい。トレーリングアームなど鍛造部品を使わず中空のパイプ構造として、強さと軽さを両立した。

 群馬県の太田市は、優秀なエンジニアによる崇高な設計をカタチにする、熟練した製造技術者たちにも恵まれていたのだ。

 スバル360は、1950年代当時としては珍しい衝突試験も入念に実施されており、今日のスバル車の衝突安全性能の高さの礎を築いたといえる。

■スバルらしいセンス溢れるデザインとクオリティ

【R1】

2005年に発売された3ドアのクーペ型軽自動車「R1」。独創的なデザインで注目を集めた
2005年に発売された3ドアのクーペ型軽自動車「R1」。独創的なデザインで注目を集めた

 R1は、スバルオリジナル軽自動車の最後の世代にして、最高にスバルらしさに溢れたモデルといえる。

 2003年の東京モーターショーで「R1e」という名の電気自動車のコンセプトカーとしてデビュー。アルファロメオなどで活躍したデザイナー、A・ザパティナス氏の指揮によるサブロクをモチーフとしたスタイリングは、当時も今も軽自動車の主流であるハイトワゴン系とは真逆の方向性といえる、低くて流麗な美しさを追求したフォルムだ。

 ほぼ同時代に出現した超ハイトワゴン、初代ダイハツ タントとは真逆のコンセプトで、背高系モデルが主流の軽自動車市場に一石を投じる強烈なインパクトを与えた。

 R1は、アルカンターラの採用をはじめとする軽自動車離れした高級志向の内装をもってプレミアム性を強調。インテリアのクオリティの高さは掛け値なしに特筆レベルで、この内装の仕立てのよさはR1の大きな魅力のひとつだ。しかし、本当の意味での「高級」は、前述したパッケージングをはじめとするクルマとしての素性そのものにある。

 他銘より全高を抑えたとはいえ、ハイトワゴン路線に進んだ初代プレオより80kgも軽量化したボディは、両側スライドドアのハイトワゴン系のボディからは到底得られない堅牢感に溢れ、ハイグリップな15インチタイヤを余裕で履きこなした。

 大きめのギャップを乗り越えた瞬間の足さばきは現行型の一部の国産コンパクトカーさえ凌駕するもので、ショートホイールベース車ならではの鋭敏な旋回フィールと、剛性の高いリヤサスがもたらす安定性をはじめとする操縦性も一級品。

 MTの設定がないことを嘆く声はあったが、R1のCVTは電子制御スロットルを採用した新世代の制御体系で、当時のほかの軽自動車の先を行くハイレベルなアクセルモニタリング制御を実現した入魂の高級ATと言えた。あえてMTを用意しなかったことも納得できる。

 しかし、この秀逸なデザインとホンモノ感に溢れた乗り味のよさを持ってしても、R1の販売は低迷した。

 スバル360の時代とは異なり、ハイトワゴン/超ハイトワゴンが主流の軽自動車市場では、スバルがスバルらしさを発揮すればするほど、一般的な軽自動車ユーザーのニーズから離れてしまうのが現実だった。軽自動車ユーザーの多くにとっては、デザインのセンスや乗り味のよさより、頭上空間が広くて両側スライドドアを備えるほうが重要とされたのだ。

 両側スライドドアを持つスーパーハイトワゴンは実用性が高く、現代では重心高によるフラつきが少ないなど走行性能も向上している。大人気が続いているのは至極当然の結果と言え、ダイハツ製の軽自動車がスバルブランドとしてOEM供給されるのを歓迎する声も多い。

 ◆     ◆     ◆

 これら3台の変遷を見てもわかるとおり、スバルオリジナルの軽自動車には「滅びの美学」のような潔さがあった。この先何十年経ったとしても、クルマ好きの間で語り継がれる魅力を備えていることは、スバルファンにとって誇らしく、また、その魅力は永遠に色褪せることはないのである。

【画像ギャラリー】スバルのオリジナル軽自動車3選を写真でまとめて見る!(7枚)画像ギャラリー

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