■モデルチェンジのたびにコンセプトが変わった
2代目エスクードの発売は、初代の投入から約9年を経た1997年で、ボディを拡大した。ロングボディには、3列シートのグランドエスクードも用意する。
この3列目は設計が巧みで、SUVなのに、床と座面の間隔が相応に確保されていた。3列目に座っても膝の持ち上がる窮屈な姿勢にならず、SUVでは例外的に多人数で乗車しても快適だった。
ただしスズキのブランドイメージがボディの拡大に合わず、フロントマスクのデザインも不評で、エスクードの売れ行きは下降した。
3代目は2005年に発売され、ボディはミドルサイズだが、価格は割安だった。特に2008年に改良された後のXGは、エンジンが2.4Lに拡大され、副変速機を備える後輪駆動ベースの4WDシステム、アルミホイールなども標準装着して価格は219万4500円だ。
同時期のエクストレイルは、価格が最も安い2Lエンジンを搭載する2WDの20Sでも206万9550円だから、エスクードでは高機能と低価格に驚かされた。
ところが1か月の登録台数は250~300台で伸び悩む。当時、スズキの開発者と話をしたら、エスクードが割安なことに気付いておらず「そんなに買い得ですか?」と言われた。
当時のスズキは、エスクードを含めて小型/普通車に力を入れず、自社製品と他車の比較もあまり行っていない。販売促進にも消極的で、この時代の影響が今も残っている。
その後のスズキは、将来の軽自動車規格に不安を感じて、小型/普通車の年間国内登録台数を2016年度中に10万台へ引き上げる目標を掲げた。実際に2016年には達成され、この販売実績の中にはエスクードも含まれている。この時期には、2015年にフルモデルチェンジされた4代目の現行エスクードが売られていた。
エスクードは2代目から3代目に掛けて、ボディを拡大したが、4代目では再びコンパクトになった。駆動方式とプラットフォームは、4代目では従来の後輪駆動ベースから、前輪駆動ベースに変更されている。
車両の性格がフルモデルチェンジの度に変わり、4代目では、ハンガリー工場で生産して輸入する方式を採用した。
現行型になった後も、パワーユニットの変更が多い。2015年の発売時点では、1.6Lのノーマルエンジンを搭載したが、2017年にはスイフトスポーツと同様の1.4Lターボを追加している。
2018年には1.6Lを廃止して1.4Lターボのみになったが、2021年には輸入販売を一度停止した。その後、2022年に、新たに1.5Lのハイブリッドを搭載して復活している。
■エスクードの後継はジムニー5ドアか?
以上のようにエスクードは、さまざまな変更や販売停止を繰り返した影響もあって売れ行きが低調だ。2022年の登録台数は、販売を再開した後の6月から12月でも、1か月平均が100台少々に留まる。
ハイブリッドを搭載する現行エスクードの価格は297万円で、ヤリスクロスハイブリッドZ・4WDの293万6000円よりも高い。WLTCモード燃費は、エスクードが19.6km/L、ヤリスクロスハイブリッドZ・4WDは26km/Lだから、燃費でも差を付けられている。
スズキとしては電動化への対応が大切で、エスクードをターボからハイブリッドに変更したが、ユーザーに対するインパクトは弱い。スイフトでは、販売総数の約半分をスイフトスポーツが占めており、エスクードにもスポーティなイメージが求められている。
そしてエスクードは開発方針が定まらず、サイズアップとダウンサイジングを繰り返すから、ユーザーの認知度も高まらない。
この問題を一挙に解決できるのは、ジムニーシエラ5ドアの導入だ。ジムニーは小型車のシエラを含めて認知度が高く、現行型は販売も好調だ。しかも先ごろ、インドで5ドアボディが公開された。
今のところ日本国内でジムニーシエラ5ドアを発売する予定は聞かれないが、仮に現在のジムニーシエラJCに30万円を加えた238万4500円から245万円くらいで5ドアを追加すれば、確実にヒット商品になる。
電動化も大切だが、ユーザーが欲しがっているスズキのSUVは、ジムニーシエラ5ドアだ。これを導入して売れ行きを高めてから、SUVの電動化を進める方法もあると思う。
特に欧州と同様のジムニーシエラ5ドアEVが登場したら、他社のEVとは明確に異なって個性化を図れる。ジムニーはアルトと並ぶスズキの高い価値、財産だから、EVの時代になっても色褪せずに魅力を保ち続ける。今こそジムニーシエラ5ドアを投入して、EVの時代に繋げるべきだ。
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