知る人ぞ知る進化した名機の“味”
水平対向6気筒SOHCを積むアルシオーネ「VX」は独特の輝きを放っている。が、これに続くボクサー6は、さらに魅力的だ。1989年1月、スバルは安全で楽しい走りのシンメトリカルAWDを採用した新感覚のプレミアムセダンとステーションワゴンを発表した。いうまでもなく「レガシィ」である。
メカニズムはすべて新設計だ。パワーユニットは新たに設計された。心臓は「EJ」と呼ぶ新世代の水平対向4気筒だ。EA系と同じようにビッグボア、ショートストローク設計とし、4バルブでも十分なバルブ開口面積を確保している。
EJ系エンジンの系列には2212ccのEJ22型SOHCがある。海外向けに設計されたエンジンだが、日本でもブライトン220に搭載され、発売された。このEJ22型エンジンをベースに6気筒化し、DOHCヘッドを被せたのが「アルシオーネ SVX」のEG33型ボクサー6だ。
最初の計画ではEJ20型をマルチシリンダー化した3.0Lだった。が、北米市場を意識して排気量を1割増やしている。ボアは96.9mm、ストロークは75.0mmで、総排気量は3318ccだ。自然吸気エンジンだが、最高出力240ps、最大トルク31.5kgmを発生。アルシオーネ SVXに積まれてデビューするのは1991年9月だ。
4速ATの設定だったが、その気になれば6000回転までストレスなく回り、4000回転を超えてからはビートに乗った独特のボクサーサウンドを奏でる。ER27型よりパンチがあり、高回転の伸びも鋭い。しかも低回転からトルクが湧き出すので、追い越し加速も俊敏だ。ドラマチックという点では、このエンジンを超えるボクサー6はない。
山岳路でも力強い走りを披露し、高速道路のクルージングも得意とする。悠々と流す走りでも気持ちいいし、ロングドライブも得意とした。EG33型エンジンは歴史に残る名機だったが、その実力を知るのはひと握りのファンだけだ。販売価格が高かったし、北米では保険料も上がったから、販売は伸び悩んでいる。
レガシィにも搭載されたボクサー6
ボクサー6の第3弾が軽量コンパクト設計と燃費を意識した3.0LのEZ30型水平対向6気筒DOHCだ。2000年、レガシィをベースにしたクロスオーバーAWDワゴンの「ランカスター6」に積まれてデビュー。
これは新設計の6気筒エンジンだ。バルブ挟み角を大きく取り、シリンダーヘッドの高さを抑え、カムシャフト駆動もスバルとしては初めてチェーンを採用して耐久信頼性を高めている。
ボアは98.4mm、ストロークは80.0mmで総排気量は2999cc。220ps/29.5kgmを発生し、冴えた加速を見せた。だが、ちょっと低回転域のトルクは細く、エンジンを回さないと面白みに欠ける。その後、レガシィにも搭載され、ファンを増やした。
2003年に4代目レガシィ(BL/BP型)がベールを脱いでいる。レガシィは、同年9月に改良型の水平対向6気筒エンジン(EZ30-R型)を追加。軽量化を図るとともに、シリンダーヘッドなども新設計としている。
可変吸気システムの「AVCS」を採用するとともに、ポルシェの「バリオカム・プラス」と同じ発想のダイレクト可変バルブリフト機構を導入し、ポテンシャルを高めた。パワースペックは250ps/31.0kgmだ。2004年10月には待望の6速MTも登場する。
改良型のEZ30-R型エンジンは切れ味鋭い6気筒だ。得意とするのは高回転で、6500回転を超えても上まで回ろうとした。また、5500回転当たりからは音色が変わって一段とパンチを増す。なめらかかつビートの効いたサウンドもスバリストを興奮させた。
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