どっちもよくてどっちも売れてる…!! トヨタ大人気SUVヤリスクロス対ライズの違いとそれぞれの長所

■両ハイブリッドをディーラーはどう売り分けている?

トヨタライズはダイハツロッキー、スバルレックスと兄弟車。ハイブリッドシステムはダイハツが開発したe-SMARTを搭載している
トヨタライズはダイハツロッキー、スバルレックスと兄弟車。ハイブリッドシステムはダイハツが開発したe-SMARTを搭載している

 1997年に誕生した初代プリウスからハイブリットカーを販売し続けているトヨタディーラーでは、THSIIとe-SMARTをどのように売り分けているのだろうか。ヤリスクロスとライズを例に、販売現場で話を聞いてみた。

 ヤリスクロスハイブリットは、車両本体価格228万4000円(HYBRID X・2WD)~293万6000円(HYBRID Z Adventure・E-four)の価格帯。対するライズは車両本体価格217万3000円(G・2WD)~233万8000円(Z・2WD)の価格帯となる。ベースグレードで比較すると、ライズの方が11万1000円安い。

 単純な価格の差で見ると、ライズの方が売りやすそうだが、トヨタディーラーでは両者を検討するユーザーの特徴に応じて、おすすめ車種を変えているという。

 ライズは、「街乗りメイン」で「2名までの乗車が多い」ユーザーへの提案が多いという。ヤリスクロスに比べてコンパクトな車体で、市街地での取り回しがしやすく、シリーズ方式の得意なストップ&ゴーの多いシチュエーションで使用するユーザーからは、好評を得ているようだ。

 ただ、それ以外のユーザーには、まずヤリスクロスを提案しているという話もあった。

 売り慣れたTHSIIは、セールストークも弾みやすい。また、メリットとデメリットの説明も、長年の販売データが営業マンに蓄積されているため、ユーザーからの納得してもらいやすいという。

 また、保有期間の長いユーザーに対しては、必ずといっていいほどヤリスクロスを推す。その理由は「故障」への対処にある。トヨタ販売店にとって、e-SMARTハイブリットのようなシリーズ方式の耐久性は、未知数な部分が多いからだ。

新車から車検3回以上(7年以上)保有した時に、どのような劣化が起きるか読みにくいダイハツのハイブリッドシステムよりも、10年10万キロ以上ノントラブルで動く実績が数多くあるトヨタハイブリッドの方が、「故障」に対処できるノウハウをトヨタディーラーが持ち合わせている。

 価格のメリットはライズだが、それ以外の「選択肢」という面で見た時に、営業活動がしやすいのは、圧倒的にヤリスクロスというのが、販売現場の本音のようだ。

■人気と安定感はTHSIIに軍配!今後e-SMARTハイブリッドへの理解が進むかがカギ

ダイハツが開発したe-SMARTはシリーズハイブリッド方式を採用。1.2Lエンジンは発電に特化されていて、モーターの力で走行する
ダイハツが開発したe-SMARTはシリーズハイブリッド方式を採用。1.2Lエンジンは発電に特化されていて、モーターの力で走行する

 2022年の累計販売台数では、ヤリスクロスが8万2710台、ライズが8万3620台とライズの方がやや優勢であるものの、ハイブリッドモデルが堅調に売れるのはヤリスクロスの方。

 トヨタディーラーでの体感としては、ヤリスクロスはガソリンとハイブリッドの比率が半々だが、ライズはガソリンの割合が7割以上であり、ハイブリッドモデル単体で見れば、ヤリスクロスへの支持が圧倒的に多い。

 とはいえ、e-SMARTハイブリッドがTHSIIに対して全面的に劣っているというわけではないことも、販売現場は認識している。ライズのハイブリッドだからこそ得られるメリットも多く、もっと情報を得たいという声が、取材した販売現場では多く聞こえてきた。

 地道にハイブリッドカーを売り続けてきた、ハイブリッド販売のプロとも言えるトヨタ。だからこそ、THSIIとは違うe-SMARTハイブリッドの生み出す良さを、もっと知り、得意の一つにしたいという意思も感じられる。

 e-SMARTハイブリッドに対する現場での生きた情報が、まだまだ足りないのは事実としてある。巻き返しには、生のデータと、シリーズ方式の良さを理解する時間が必要となるだろう。

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