今や軽自動車でさえ後ろのドアは両側スライドが当然だが、90年代ごろまでスライドドアは片側のみが基本。今思えばかなり不便そうだが、なんで両側スライドドアがメジャーじゃなかったのか!?
文:青山尚暉/写真:ベストカーWeb編集部
■2000年代初頭まで片側が常識!? 初代エルグランドですら左側だけ
現在のミニバンやプチバン。そしてスーパーハイト系軽自動車は、両側スライドドアが付いているのが当たり前。ヒンジ式ドアのように外側にドアを開く必要なく、両側にクルマが停まっている状態でもスムーズに乗り降り出来るのが最大の魅力。
しかし、そんな両側スライドドアが乗用ミニバンに採用され始めたのは、およそ今から24年前のこと。それまでは、ほぼ片側スライドドアだったのである。
例えば、日本のファミリーカーを一変させた、国産多人数乗用車のパイオニア的1台と言っていいホンダ・ステップワゴンは、1996年に登場した初代、2001年登場の2代目まで、助手席側の片側スライドドアを採用していた。
1996~2001年まで生産された、今のトヨタ ノアの前身となるトヨタ タウンエースノアも、振り返れば片側スライドドアで、1997年に登場した日産エルグランドも初代は片側スライドドアだったのだ。
■片側のみだったのはボディ剛性の問題!? 使い勝手はイマイチだった……
そしていよいよ乗用ミニバンが両側スライドドアを採用したのは、まずは1999年6月に発表された日産 2代目セレナ、マツダ 2代目MPVであった。それ以来、追従するようにFF化された2001年登場のトヨタ 初代ノア、2002年登場の日産 2代目エルグランド、2005年登場のホンダ 3代目ステップワゴンが両側スライドドアの採用に踏み切ったのである。
では、トヨタ・タウンエースノアや初代~2代目ステップワゴンなどが、なぜ両側スライドドアを採用していなかったのか。その理由を、筆者がしたためていた初代、2代目ステップワゴンなどの新車を試乗したときに開発陣に聞いたメモを引っ張り出し、説明したい。
まずは、ボディ剛性の確保である。当時の自動車製造技術では、明らかに片側スライドドアより両側スライドドアを造るのが、ボディ剛性の確保上、難しかったのだ。
とくにホンダはミニバンにも走りの良さを求め、追求していたから、選択肢としてよりボディ剛性が確保しやすい片側スライドドアしかなかった……ということだ。
ちなみに当時筆者は「左右の重さが異なるから、左右の操縦安定性に違いは出ないのか?」と質問している。ステップワゴンの開発陣によれば、「そこはしっかりと設計し、左右の操縦安定性に差がでないように仕上げてある」との答えだった。
当時からミニバンに興味津々、2002年には2代目オデッセイ・アブソルートV6を愛車とした筆者が思ったのは、走りの良さを追求するのはいいけれど、片側スライドドアの場合、運転席から下りて後席にアクセスする際、クルマの周りをグルリと回らなければならない不便をなんとかしてよ!! ということだった。
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