あのエルグランドもノアも!! なんで昔のミニバンは両側スライドがほぼなかったの!?

■5ナンバー枠という大きな問題!! 4つも大きな理由があった

2代目までにステップワゴンは5ナンバーという限られたサイズというのも片側のみだった理由のひとつ
2代目までにステップワゴンは5ナンバーという限られたサイズというのも片側のみだった理由のひとつ

 しかし、ミニバンのように大空間、大開口部を持つクルマは、当時のボディ構造、素材的に両側スライドドアだとボディ剛性確保が難しかった点。それに加え、もうひとつ片側スライドドアにせざるを得なかった(!?)理由がある。

 ファミリーカー、多人数乗用車として開発された当時のステップワゴン、ノアにしても扱いやすい5ナンバーサイズだったため、車幅が限られていたのだ。

 つまり、両側スライドドアより片側スライドドアのほうが、室内幅を広く取りやすかったのである。ミニバン=大空間のクルマというイメージからすれば、少しでも室内を広くしたい、広く見せたい。だからドア部分に厚みが出てしまうスライドドアを片側だけ採用しようという……考え方になっても不思議ではない。

 さらに、初代ステップワゴンの「こどもといっしょにどこいこう」のキャッチコピーが示すように、子育て世代御用達となりうる新しいファミリーカーのカタチとして誕生したステップワゴン。

 このクルマにとって、後席に乗った子どもを、右側スライドドア、つまり車道側から下ろすのは危険であり、そうした配慮から歩道側のみの片側スライドドアを採用した経緯もあったはずである。

 もちろん、両側スライドを付けると車重がかさむことになる。モーターなどが加わるパワースライドドアは当然として、非パワースライドドアでも、ヒンジ式ドアとは比べものにならないほど大きく重いスライドドアそのもの。それに加え、スライドドア開口部の剛性確保、キシミ音などを出さない品質確保のために補強部品の追加、補強対策は不可欠である。

 結果、当時の自動車製造技術ではどんどん重くなり、燃費の悪化はどうにも避けられない。

 そうした、ボディ剛性、室内空間(幅方向)、安全な後席乗降性、燃費という4つの問題を解決すべく、乗用ミニバンとしては両側スライドドアの採用が見送られたのである。

 もっとも、80年代からダイハツ・ハイゼットがそうであるように、両側スライドドアを備えたクルマはあるにはあった。ただ、ボディサイズや用途から、ボディ剛性や、それに伴う走りについての要件が乗用車とは異なるため、採用が可能だったと推測できる。

■3代目MPVもデキがピカイチ!! 新型オデッセイにも期待大

今は亡きMPVはミニバンらしからぬ走りが魅力!! それは両側スライドを備えた3代目でも走行性能に妥協ナシだったのだ
今は亡きMPVはミニバンらしからぬ走りが魅力!! それは両側スライドを備えた3代目でも走行性能に妥協ナシだったのだ

 話を戻すと、1999年6月に発表された2代目セレナ、2代目MPVから採用が始まった乗用ミニバンの両側スライドドアはその後進化を続けることとなる。

 今でも思い出深いのが、3代目(2006年~2016年)MPVのシリーズ途中のマイナーチェンジだ。スライドドア周りの剛性を、たしか構造用接着剤などの追加採用で一段と高めた結果、走りの質が大きく向上した。

 九州での1泊2日の試乗会だったと記憶しているが、1日200キロ以上の試乗コースで、同乗した自動車専門誌の編集者から「そろそろ運転、変わりましょうか」と言われたものの、スライドドア周りのボディ剛性UPに伴うあまりの走りの気持ち良さに、2日間、ステアリングを一度も明け渡さなかったことがあったのだ。

 3代目MPVのキャッチコピーが「スポーツカーの発想で、ミニバンを変える」だったのだが、まさにスポーティカーのように走ってくれた記憶がある。それぐらい、ミニバンの大開口部となるスライドドア周りは剛性確保が重要であり、走りの質感に大きく影響するということである。

 ここ最近のミニバンなら、設計、製造技術が大きく進化し、両側スライドドアを採用してもボディ剛性はしっかりと確保されていて、なんら心配はいらないだろう(使い方、走り方、走行距離にもよるが)。

 ライバルメーカーのミニバン開発責任者が「ミニバンの皮をかぶったスポーティカー」、「うちではできない」と表現した、今はなき、満を持して両側スライドドアを採用した5代目オデッセイの走りの良さがそれを証明しているように思う。

【画像ギャラリー】初代ワゴンRも!? 懐かしの片側ドアファミリーカーイッキ見(5枚)画像ギャラリー

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