クルマやバスを動かすには、燃料をはじめとするエネルギー源、つまり燃料が不可欠だ。ではどんな種類のエネルギー源があり、それがどんな乗り物に使われているのだろうか。
文:中山修一
■ラインナップ多彩な石油系化石燃料
乗り物に使われるエネルギー源で現在最も一般的なのが化石燃料だ。石炭、天然ガス、石油といったものが化石燃料の枠組みに含まれる。
ここでは石油に絞って見ていこう。石油とは、火を付けると燃える鉱物性の油の総称で、大抵は「原油」から作られている。
さらに原油にも元があり、こちらは太古のプランクトンや生物の死骸・植物などが堆積して変質したものと考えられている。
原油をそのまま燃料として使うことはあまりなく、原油を材料に精製を行って燃料になる油を作り出すのが普通だ。
精製の工程では、大まかには蒸留塔と呼ばれる特殊な装置で原油を加熱する。この際、原油の成分中の沸点の違いによって油が分離していく。
蒸留塔の設備は高さが50mくらいあり、塔の底から順に異なる性質を持った燃料が階層状に作られていく。沸点の高いほうが底に溜まり、主な種類では……
↑天井
上に溜まったガス:LPG
35〜180度C:ガソリン
170〜250度C:灯油/ジェット燃料(ケロシン)
240〜350度C:軽油
350度C以上:重油
↓底
……が挙げられる。
■半端ない量を燃やすなら一択!? 重油
原油から枝分かれして生産された各種燃料を使う乗り物を、燃料の種類ごとに区分けしてみよう。
まずは蒸留塔の最も底に位置する重油だ。重油は茶褐色をしており、火種を近づけた際、その液体に火がつく液温を示す引火点は70度C以上という特性を持っている。
燃料の中では引火点が高く、比較的燃えにくいと言える。安価であるため、燃料を大量に消費する船舶用のディーゼルエンジンに重油がよく使われる。
ちなみに、大型クルーズ客船などに搭載する12,000馬力クラスのディーゼルエンジンの場合、排気量で言うと79万ccくらいある。
■大型車両と密接な関係にある軽油
重油の上にできる層が軽油にあたる。一般販売向けの軽油はやや緑がかった薄い黄色に着色されている。引火点は45度C以上。
単独での火災を起こしにくく、力強い走りが得られるディーゼルエンジン用の燃料として軽油は定番だ。
軽油を使う乗り物の中に含まれるのがバス車両だ。日本ではディーゼルエンジンを積んだバス車両が大多数を占めており、小型・中型・大型、路線車・貸切車等のサイズやジャンルを問わず、軽油が最もポピュラーな燃料と言える。
また、電動モーターの力を利用するハイブリッドバスも、ディーゼルエンジンを回して電気を作り出す構造上、実際のエネルギー源は普通のディーゼル車と同じ軽油になる。
バス車両のほか、小型〜大型トラックや、フォークリフトのような作業機械、ブルドーザー等の建設機械、鉄道車両、船舶など、軽油を燃料に用いる乗り物は多岐に渡る。
軽油は、重量がある、もしくはサイズが大きめな乗り物に好まれる燃料とも取れなくない。