日本初の連節バスはつくば万博だが実質的な一般路線運行は1998年の京成バスだった話

日本初の連節バスはつくば万博だが実質的な一般路線運行は1998年の京成バスだった話

 日本でもにわかに増えてきた連節バス。京成バスにはじまり、東京BRT、神奈川中央交通、新潟交通、岐阜乗合自動車、帝産湖南交通、奈良交通、南海バス……。連節車増加の背景と世界での位置付けに迫ってみたい。

(記事の内容は、2022年9月現在のものです)
執筆・写真/谷川一巳
※2022年9月発売《バスマガジンvol.115》『バスにまつわる愉快だけどマジな話』より

■そもそも連節バスはなぜ増えたのか?

横浜市営バスの連節車「ベイサイドブルー」
横浜市営バスの連節車「ベイサイドブルー」

 日本での連節車、はじまりは1985年にさかのぼる。この年に茨城県つくばで開催されたつくば万博会場と国鉄常磐線の臨時駅の間をピストン輸送するのに使われた。スウェーデン製シャシーに富士重工の車体を載せ、閉幕後は国内でも利用されたが、多くはオーストラリアへ売却された。

 その後はしばらく日本で連節車の運行はされなくなったのである。

 博覧会会場への輸送といった一時的なものではなく、本格的に路線バスとして連節車が使われるようになったのは、1998年の京成バスが最初であった。千葉の幕張新都心開発に伴って導入されたのである。しかし、その後も日本では普及することはなく、連節車は特殊な存在であった。

 ところが、近年になって連節車の需要が増えていき、ついに国産車が登場、普及に拍車がかかってきた。その背景には、需要が増えたということより、運転手不足という深刻な問題があり、同じ輸送力を確保するにはバス1便当たりの輸送力を増やす必要に迫られているというのが本当のところなのである。

■運賃の仕組みが連節車運行の妨げに?

ヨーロッパでは3連節車も多く運転されている(オランダ)
ヨーロッパでは3連節車も多く運転されている(オランダ)

 一方、海外に目を向けると連節車は通常の路線バスとして古くから当たり前に運行して、珍しいものではない。海外では3連節車や長距離バスの連節車も珍しい存在ではない。海外と日本を比べた場合、日本独特の問題というか事情も見えてくる。

 なぜ日本で連節車が普及しなかったかを考えると、連節で車体が長くても、降車時には運転手横の出口で運賃授受を行うため、スムーズな乗降にならないということがある。運賃授受に時間を要し、結局通常のバスのほうがスムーズだったりする。

 その点、ヨーロッパの路線バスなどは、多くが信用乗車制なので、運賃は予め切符を購入するか、ICカード利用がルールである。

 均一運賃が多く、ほとんどが公営交通で路面電車や地下鉄と同じ組織が運営するため、一定時間どの交通機関でも乗り降り自由が一般的だ。そのため連節車で多くのドアがあれば、どのドアからも乗降自由なので乗降がスムーズになる。

 日本の場合、都市内の路線バスであっても距離制運賃になっていることが多く、降車地ごとに料金表を見て、両替をして、運賃を払うという路線バスが一般的で、このシステムが当たり前に思われるだろうが、世界ではごくごく少数派なのである。

 信用乗車では無賃乗車が気になるが、頻繁に車内検察を行って、不正乗車には罰金が課せられる。

 そういえば日本の連節車は駅から大学キャンパスなど、利用者の多くが、乗車区間が決まっているような路線で運転される傾向がある。つまり、連節車は、停留所ごとに乗降がある路線には不向きなのであろう。

 しかし、先日西鉄バスの連節車に乗車したところ、ICカード利用に限っては後方出口から乗車して降車することも可能になっており、限定的であるが信用乗車と感じた。この方法が普及すれば、連節車の運行はさらに増えるのかなと感じたのである。

【画像ギャラリー】長い車体が路上を走る姿は壮観!! 日本でも増えつつある連節車と海外で活躍する連節車(13枚)画像ギャラリー

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