パッソ生産終了…さよなら……いいクルマだったよ…足跡と功績

機能充実、燃費トップクラスの普通車でありながら、127.5万円という低価格の現行型

 現行型のパッソは2016年にデビューした。「街乗りスマートコンパクト」をコンセプトに、コンパクト車としての基本である「経済性」と「使いやすいパッケージ」、「コンパクトでありながらも安心感ある走り」を追求し、開発された。

 標準的なグレード「X」の他に、上品なデザインとディテールが与えられる「MODA」という新グレードを設定。選択肢の幅を広げた。エンジンは全車1.0LでCVTと組み合わせられ、燃費性能は28km/L(JC08モード)と、ガソリンエンジンの登録車としてトップクラスの性能を誇る。

 ボディサイズは全長3650mm×全幅1665mm×全高1525mm、ホイールベースは2490mmとコンパクトなサイズを維持しつつ、前席と後席の間を従来型に対して75mm延長することで、ゆとりの室内空間を確保。また衝突回避支援システムとして「スマートアシストIII」を搭載し、衝突被害軽減ブレーキや誤発進抑制制御機能、車線逸脱警報機能、先行車発進お知らせ機能など先進機能でドライバーをサポートする。

 なお車両価格はベーシックグレード「X(2WD)」で127万5000円、4WDのトップグレード「MODA G package」で191万3000円(いずれも2023年4月末時点のグレードの価格)。普通自動車で130万を切る価格のモデルが消滅してしまうのは、なんとも寂しい限りだ。

ベーシックなグレードの「X」。上級グレードの「MODA」よりもシンプルなスタイリングだが、シンプルである上に、お手頃な価格が好評だった
ベーシックなグレードの「X」。上級グレードの「MODA」よりもシンプルなスタイリングだが、シンプルである上に、お手頃な価格が好評だった

兄弟車のダイハツ「ブーン」は継続

 パッソは、いわゆる「リッターカー」で、車格としては、日本でいまもっとも人気のあるコンパクトモデルである「ヤリス」よりも小さいクラスとなる。軽自動車よりも大きく、エンジンの排気量もあるのでゆとりの走りと室内空間、そして安全性が得られるのが特徴だ。

 ただ昨今は、軽自動車の商品力が向上してきており、N-BOXをはじめとして、コンパクトカーを超える装備と性能(そして金額も)の軽もたくさんある。走りや質感、乗車人数(軽は4人乗り)や車内の広さなどが、「軽で十分」と考えるユーザーは、軽自動車を選択するだろう(税金も安い)。逆に、「軽じゃ物足りない」と感じるユーザーは、デザインやインテリア、走行性能、乗り心地など、全ての質感でパッソに勝るヤリス(147万円~)を選択するだろう。

 パッソの兄弟車であるダイハツ「ブーン」は継続販売とのことで、次期モデルも登場とのウワサもある。このあたりは、ダイハツとトヨタのラインアップの違いによるところも大きいだろうが、小型車のハイブリッドモデルが増え、車両価格が上昇傾向にある昨今は、パッソのようなシンプルなメカニズムと装備で低価格を担うモデルは、まだ多くの需要があるように思える。ブーンには、パッソのぶんの活躍も期待したい。

「MODA」のインテリア。アクセントカラーがおしゃれだ
「MODA」のインテリア。アクセントカラーがおしゃれだ

 (※編集部注/日産マーチの生産終了(2022.8)もそうですが、トヨタ、日産、ホンダなどの主要メーカーにとって、どことなく「日本市場におけるAセグメントは、もう軽自動車だけでいいか…」という空気が、パッソ終了によってさらに濃厚になった気がして、なによりそれが悲しいです。たしかに「軽自動車」は日本が誇る偉大な自動車文化の傑作であり、非常に力強い商品カテゴリー群で、しかも税制度の優位性もあります。しかしそのうえで、日本の「リッターカー」だって長い伝統を持ち技術的、ブランド的な積み上げのある偉大なカテゴリーなはず。まだまだ可能性もあるのでは。特に廉価な若者向けブランドで。具体的にはスターレット、もう一回復活してくれんかなあ)

【画像ギャラリー】さよならパッソ… 最終型となる現行型「パッソ」(16枚)画像ギャラリー

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