■北米仕様には6速MT車はあるのに……
その意味で残念なのが、冒頭で取り上げたWRXだ。現行型のWRXはS4のみで2ペダル専用車になったが、前述のとおり先代型には、CVTのWRX S4と6速MTのWRX STIがあった。そして先代WRX全体に占めるSTIの比率は、2019年は58%、2020年は62%だ。先代WRXでは6速MTのSTIがATのS4よりも安定的に多く売られていた。
そうなると現行型のWRXに、6速MT車を求めるユーザーも多いのではないか。この点を販売店に尋ねると以下のように返答された。
「今のスバル車を新車で買った場合、6速MTを選べる車種はBRZのみ。しかし、ほかの車種でもMTに乗りたいスバルのお客様は多いです。特に先代型のSTIに乗るお客様は、乗り替えの対象としてMT車を強く希望されています。北米仕様にはS4のMTもあるから、これを設定して欲しいと思っています」。
現行WRX S4は、排気量を先代型の2Lターボから2.4Lターボに拡大したが、最高出力の数値は275ps(5600回転)、最大トルクは38.2kgm(2000~4800回転)だ。先代WRX S4は、2Lターボながら300ps/40.8kgm、6速MTの先代WRX STIは308ps/43.0kgmだったから、現行型は排気量を拡大しながら動力性能を示す数値は下がっている。
■北米では販売好調な現行型WRXシリーズ
それでもミドルサイズのボディに、275ps/38.2kgmの動力性能なら、充分な高性能車だ。開発者にS4と6速MTの相性を尋ねると「WRX S4に6速MTを組み合わせることは可能だ。実際、北米仕様にはその設定があり、運転感覚も良好だ」という。
北米仕様のWRXが搭載するエンジンは、日本仕様と同じく2.4Lターボだ。最高出力は271ps(5600回転)、最大トルクは35.7kgm(2000~5200回転)だから、性能的にもほぼ等しい。北米ではこのパワーユニットに、国内仕様と同様のCVTと、6速MTを組み合わせている。
しかもWRXは、北米での売れゆきが好調だ。2023年3月には、2023年モデルの投入もあり、前年の3月に比べて13倍の売れゆきになったという。2023年第一四半期(2023年1~3月)の北米スバルは14万台を上回り、対前年比は2年ぶりに回復して8.3%の増加となった。
WRXは北米などの海外でも、スバルのブランドイメージを支える役割を担っている。日本でも2019年には、先代WRXがモデル末期ながら1カ月平均で約600台が登録され、そのうちの58%が前述のとおり6速MTのWRX STIだった。
■WRXとレヴォーグにもMT車の追加を!
それが2022年の1カ月平均登録台数は、約300台と半減している。新型コロナウイルスと、これに伴う納期の遅延も影響したが、2021年に新型にフルモデルチェンジしながら売れゆきが半減した一番の原因は、6速MTを用意しないバリエーションにユーザーが不満を感じているからだ。
電動化が急速に進む今の時代に、6速MTの成立するスポーツモデルは貴重な存在だ。特にWRXは伝統ある車種とあってファンも多く、スバルブランドとの親和性も高い。ぜひ6速MTを導入すべきだ。できればレヴォーグにも6速MTが欲しい。
なお、これからはレヴォーグをアウトバック風にアレンジしたSUV仕様なども登場する予定だ。クロストレックを含めてSUVテイストが強まるのは、今の販売動向を考えると当然ともいえるが、走行安定性と運転の楽しさを重視する低重心のスバル車も大切だ。新型インプレッサにもSTI Sportを設定して、日常的な移動のなかで、上質な運転を楽しめる6速MT車を提供すると喜ばれるだろう。
好例がスイフトスポーツで、スイフト全体の約半数をスポーツが占める。しかも6速MTの割合がATよりも多い。身近なクルマでMTを操るのは実に楽しく、スバルのブランドイメージにも合っている。
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