無人艦隊の登場も見えてきた!? クルマよりも歴史が古い航空機や船舶の自動操縦とは

■待望の自動運行船。その登場は?

 オートパイロットをより進化させていくと、最終的には人間が船の航行に介在しない自動運航船ということになる。

 自動運航船とは「桟橋や岩壁から自動操船で離れることができ」、「速度の過減速を行い」、「沖合で揚錨し停泊状態から航行状態に移行し」、「設定された航路上を障害物を避けながら航行でき」、「沖合で投錨して航行状態から停泊状態に移行」、「桟橋や岸壁に接岸、停泊できる」という運航業務全体が行える船舶のことだ。

 また桟橋や岸壁に接岸した後、貨物や客などの積み下ろし作業を行えることも自動運航船の定義に加えている場合もある。

 ちなみに自動運航船は、自動航行船、自律運航船、無人航行船などと呼ばれており、それぞれは明確に区別されていないのが現状。強いて区別するとすれば、以下のとおりとなる。

(自動航行船)
トラック・コントロールシステムやヘディング・コントロールシステムのような自動航行機能を持ち、人間が直接航行に関係する機器を操作することなく運航できる船舶。また人間が遠隔地から通信によって操船指令を出し、その指令に基づいて運航する船舶も含まれる。船に船員が乗っているかどうかは関係ない。

(自律運航船)
各種センサーにより自船の周囲を監視し、AIにより周囲の状況や物体を識別、衝突の危険の有無を判断し、危険がある場合には回避行動を行う。回避後は目的地へ向かうための航路に戻ることができる船舶。監視から識別、判断、回避行動、航路への復帰までを人間の判断を介すことなく行える機能を持つことが特徴。船に船員が乗っているかどうかは関係ない。

(無人航行船)
船に船員が乗っておらず、自律運航船の機能を持つ船舶。自律運航機能を持っていれば、人間が遠隔地から通信によって操船指令を出し、その指令に基づいて運航する船舶も含まれる。船に乗客が乗っていても良い。

 現在の段階で自律運航機能を持つ船舶の実用化はまだ難しいが、遠隔操作で航行する自動運航船の実用化の可能性は高い。2016年に行われた自律船舶技術シンポジウムではロールス・ロイス社が遠隔操作で動く商用船の実用化を示唆している。その商用船は2020年代の早い時期に登場し、地上の管制施設から同時に複数の船が操作され、乗員をのせないことでコストを抑えることができ、貨物を積むスペースが広くなるという。

■海戦が変わる? 無人水上艦艇の今後

 最後に無人水上艦艇にふれておこう。航空機にドローンがあるように船舶にもドローンがある。水上ドローン(USV:Unmanned Sea Vehicle)と呼ばれている無人船舶だ。

 水上ドローンといえば、2022年10月末にクリミアのセバストポリ沖合でウクライナ軍がドローンと水上ドローンでロシア黒海艦隊を攻撃したことを覚えている方も多いだろう。水上ドローンを自爆船のように使用した史上初の例で、海戦が新時代に入ったといわれている。

 ところで世界一の海軍力を誇るアメリカ海軍では無人船舶の開発に抜かりがない。たとえば、2008年からテキストロン社のフリート級無人水上艇CUSV(Common Unmanned Surface Vehicle)を導入し、試験運用を行ってきた。当初の目的はインディペンデンス級沿岸戦闘艦を母艦として機雷および対潜水艦戦任務を遂行するためだった。

遠征高速輸送艦USNSミリノケットの艦橋。オートパイロットなど操船用のほとんどの装置をこのパネルで操作できるようになっている。手前の人物が握っているのが操舵装置(写真/US NAVY)
遠征高速輸送艦USNSミリノケットの艦橋。オートパイロットなど操船用のほとんどの装置をこのパネルで操作できるようになっている。手前の人物が握っているのが操舵装置(写真/US NAVY)

 CUSVは全長12m、最大速度35ノット、遠隔操作やプログラミングによる自律航行で航行し、最大20時間以上運用することが可能だ。ミッションモジュールを交換することで、情報収集、監視・偵察任務、掃海任務、対地上戦、UAVやUUV(自律無人潜水艇)の発射・回収など様々なミッションに使用できるようになっていた。

 最終的にCUSVは機雷の捜索・無力化するための掃海任務用のUISS(Unmanned Influence Sweep System)として2022年7月に初期運用能力(IOC)を獲得、艦隊での運用開始が正式に承認されている。

 またシー・ハンターと呼ばれる自律型無人水上艇の実験運用も行われており、この船は将来的には実用化されて対潜水艦戦や対機雷戦に使用される予定だ。

 現在、アメリカ海軍ではLUSV(Large Unmanned Surface Vehicle)、MUSVs(Medium Unmanned Surface Vehicles)、XLUUVs(Extra-Large Unmanned Undersea Vehicles)と呼ばれる3種類の無人水上艦艇の開発と調達を計画している。将来的にはこれらの無人水上艦艇により艦隊が構成されることになる。その足がかりとして2022年5月、アメリカ海軍では無人水上艦艇を運用するためのUSVDIV(Unmanned Surface Vessel Division:無人水上師団)-1を設立した。

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