わざわざ黒くしてる!? なぜタイヤは黒いのか? カラータイヤ登場の可能性とは

■カーボンブラックの役割と使用量減少の理由とは

横浜ゴムの研究所で撮影したカーボンブラック(通常のカーボンブラックと、古タイヤから再生したゴム、再生カーボンブラック)
横浜ゴムの研究所で撮影したカーボンブラック(通常のカーボンブラックと、古タイヤから再生したゴム、再生カーボンブラック)

 ちなみにカーボンブラックというのは燃料を燃やした際に出る煤(すす)で、純粋なカーボン(炭)だと思っていい。

 ゴムの柔軟さを保ちながら、ボロボロと崩れ落ちないために、カーボンブラックがゴム同士を繋ぎ合わせえているのだ。

 ところが最近のタイヤはカーボンブラックの使用量が昔に比べて少なくなっている。というのもカーボンブラックに代わる補強材としてシリカが使われるようになり、カーボンブラックの使用量が減っているからだ。

シリカ(通常のシリカと籾殻から作られた籾殻シリカなど)
シリカ(通常のシリカと籾殻から作られた籾殻シリカなど)

 シリカとはケイ素のことで、ガラスやシリコンの原料でもある硅砂(一般的な砂)から作られている。

 つまり地球上には無尽蔵にあるもので、タイヤ以外にも様々さまざまな分野で使われているものだ。

 シリカはゴムの補強になるだけでなく、発熱(熱エネルギーに変換されることで転がり抵抗になっている)も抑えることができる。

 また、転がり抵抗が減らせ、撥水効果もあるのでウエット性能も高められるなど数々のメリットがある素材だ。

 しかしカーボンブラックより高価だというのが従来の感覚。しかもシリカは配合量を増やすとゴムの中で偏在してしまい、ゴム強度などの性能にバラつきが出てしまうので、上手く分散させることが重要なのだ。

 しかしタイヤメーカーは練混技術や結合剤などの開発により、シリカをタイヤゴムの中にたくさん配合することを実現したのである。

 そしてシリカはタイヤへの使用量が増えてきたこともあってか、どんどん価格が安くなり、種類も豊富になって、コスト面でのハードルは下がった。

 そしてエコタイヤなど燃費に対する要求が高まったこともあって、シリカの配合量が上昇しているのだ。

「最近のタイヤはカーボンブラックの配合量が減っています。100%シリカ配合と謳ってうたっているタイヤも実はタイヤを黒くするために数%だけはカーボンブラックを配合しているんですよ」

 と教えてくれたのは、横浜ゴムの取締役常務執行役員 技術・生産統括兼IT企画本部担当の清宮眞二氏。

 何と、わざわざタイヤを黒くするためだけにカーボンブラックを配合しているそうだ。では、タイヤを黒以外にするということは検討されないのだろうか。

「タイヤゴムであれば、特性は如何様にもできますよ」

 と頼もしい言葉を語ってくれたのは、横浜ゴムの理事で研究先行開発本部 タイヤ第二材料部長の尾ノ井秀一氏だ。

 その尾ノ井氏によれば「タイヤゴムの開発において、黒以外の要望が出ることはない」そうだ。

 タイヤは黒いモノという前提で開発が進められているのである。

 何故なら、前述のようにカラータイヤは汚れやすいだけでなく、同じタイヤサイズでも数種類のカラーバリエーションを用意しなければならないという生産や在庫の煩雑さという問題もある。

 黒以外のカラータイヤを用意するとなると、ボディカラーとの相性もあるからだ。

■今後、カラータイヤ復活の可能性も!

 では、今後もカラータイヤは登場しないのか。実はカラータイヤが登場する可能性は非常に高い。それは大きく分けて3つの理由がある。

 一つはアジアンタイヤの普及だ。価格の安さから、日本でもアジアンタイヤがアフターマーケットを中心にシェアを拡大しつつある。

 アジアンタイヤは安いだけでなく、成長するためブランドの知名度を上げるためであれば、貪欲に行動する新興メーカーが、従来のタイヤメーカーでは手を出さない分野に進出してくる可能性は充分にある。

 実際、軽自動車用では一部、中国製のカラータイヤが輸入されているようだ。

 二つ目はトップブランドのタイヤメーカーも新技術により汚れないカラータイヤを実現できる可能性がある、ということだ。というのもタイヤゴムは、今後さらに進化していくことが求められる。

 ユーロ7という新しい欧州の環境規制では、タイヤやブレーキから発生するダストについても、その排出量が制限されることが検討されている。

 それをクリアするためには、従来より減らないタイヤを開発する必要性が出てきたのだ。

 減らないタイヤということは、汚れないタイヤが誕生する可能性もある、ということでカラータイヤを作るための障害が1つクリアされることになるのである。

トーヨータイヤが開発中のエアレスタイヤ。クルマを支える樹脂部分は青色に
トーヨータイヤが開発中のエアレスタイヤ。クルマを支える樹脂部分は青色に

 3つ目はパンクしないタイヤ。エアレスタイヤはカラータイヤになる可能性が高い、ということだ。エアレスタイヤはトレッド面は黒いゴムでも、クルマを支える樹脂部分は様々さまざまな色を実現できる。

 タイヤメーカーとしても従来のタイヤとは差別化したいので、タイヤの構造部分は色を付けて開発している。つまり見た目はカラフルなエアレスタイヤが登場する可能性が高いのだ。

【画像ギャラリー】トーヨータイヤが開発中のエアレスタイヤ装着した個性的なハイゼットを写真で見る!(6枚)画像ギャラリー

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