EV一辺倒に早くも限界が!? 欧州の「2035年以降内燃機関容認」で電動化戦略は変化するのか

■EV戦略に変化アリ!!

日本メーカーはもちろん、各国の自動車メーカーの今後の方針は非常に興味深いところだ
日本メーカーはもちろん、各国の自動車メーカーの今後の方針は非常に興味深いところだ

 冒頭でも触れたが、欧州において「2035年以降、内燃機関車の新車販売が禁止される」という流れを受けて、各自動車メーカーは電動化、特に純EV(BEV)への動きを加速させた。2021年7月の段階で、ベンツは2030年にすべての新車販売をBEVとすることを表明していた。

 日本メーカーも全体的には「電動化」に舵を切っているのは間違いないのだが、メーカー間での温度差は少なくない。「電動化」にはハイブリッド車やPHEVなども含まれ、これらには内燃機関が搭載される。

 日本メーカーでEV化へのシフトに積極的なのがホンダで、2021年4月、現在の三部社長が就任時の会見で「2040年に全世界で販売する四輪車をEVとFCVにする」と脱エンジンを打ち出した。

 日産は比較的早くから電動化に動いているが、ホンダほど急進的ではない。トヨタは多角的なパワートレーンの可能性を主張しており、完全EVシフトには否定的なスタンスを貫く。

 そこに今回の欧州での方向転換、各メーカーの動向に変化が出るのだろうか?

■池田直渡氏の視点

欧州メーカーは「電動化」をアピールしていたが、それはある意味社会に向けたアピールで、実情は「わかっていた」のだ
欧州メーカーは「電動化」をアピールしていたが、それはある意味社会に向けたアピールで、実情は「わかっていた」のだ

 EUが2035年時点での内燃機関の存続を決めた。ただし、「e-Fuel(水素から作る合成燃料)を使用する場合に限る」と条件付きである。

 さて、その心は? おそらくそれは、既定路線どおりということだろう。

 現在のグローバル新車販売台数はおよそ8000万台。部品不足以前にはおおむね9000万台半ばだった。対して2022年、過去最高を記録したBEVの販売台数は780万台。

 BEV増産のネックになっているのはバッテリー原材料だが、レアアースを採掘する鉱山開発には10〜20年かかる。2035年までの10年少々で鉱物資源の生産量を現在の10倍にするのはほぼ不可能と言っていいだろう。

 新車の100%をBEVにするのは茨の道なのである。仮にBEVの生産台数頭打ちに目を瞑って、内燃機関禁止を強行したら、クルマがまったく足りない。BEVの増産は、頑張って3000万台。奇跡が起きて5000万台が関の山。となれば全世界で見れば大減産を余儀なくされることになる。

 部品不足で1500万台ほどダウンしただけで、異常な長納期に見舞われている現状からすれば、それが世界に与えるインパクトは考えるだけで恐ろしい。納期10年待ちの世界がやってくる恐れがある。

 そうなれば、世界の自動車メーカーの半数が破綻すると筆者は考えている。それは世界恐慌の比ではない壊滅的な打撃となるだろう。どう考えても、各国がそれを受け入れられるはずはない。世界の需要を満たし、経済を回すためにも、2035年の内燃機関完全撤廃はあり得ないのだ。

■最終目標はカーボンニュートラルなのだ

欧州が表明したe-Fuelはもちろん、あらゆるカーボンニュートラル燃料を導入していくことになると池田直渡氏は予測する
欧州が表明したe-Fuelはもちろん、あらゆるカーボンニュートラル燃料を導入していくことになると池田直渡氏は予測する

 案の定、今回内燃機関の温存が発表された。しかし、これもまだまだ伏線である。バッテリーと同じく、e-Fuelもまた2035年までに石油を完全に置き換えるほどの量を生産できないのは確実だ。そこも何か対策が必要になるだろう。

 BEVにシフトできる台数はカウントから外していいがそれだけではまだ足りない。おそらくe-Fuelだけでなく、バイオ燃料もバイオエタノールも含め、あらゆるカーボンニュートラル燃料(CNF)を導入して、それらの総力戦で不足分をカバーすることになるはずだ。

 そして、おそらく、ガソリンに10〜20%のCNFを混ぜて、段階的にカーボンニュートラル(CN)に近づけるというストーリーになるだろう。「新車だけでなく保有車のCN化も進められる」と言い出すだろう。

 そもそも2035年の論拠は、2050年の完全なCN化達成のためには、クルマの平均保有期間に相当する15年前には新車の100%CN化が必要だからだ。

 保有車も同時に脱炭素化できるのであれば、2035年にゴールを設定する必要がなくなる。2050年までに混入比率を100%にすればいい。時間が稼げるのだ。

 自動車メーカー各社はそんなことはとっくに見通していたが、環境団体からの攻撃をかわすために、BEVシフトをアナウンスしてきたに過ぎない。

 もちろん彼らとて環境を無視していいとは思っていないが、環境技術を開発し普及させていくにはそれなりの時間が必要なことは、やっている当人は一番よくわかっていた。スケジュールに無理がある。その端的な表われこそが、今回の内燃機関存続の決定である。

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