■コストが高すぎたSKYACTIV-X
意外だったのはCX-60にSKYACTIV-Xを搭載してこなかったこと。
ガソリンの6気筒についちゃ当然ながら圧縮着火だと思っていたら、日本市場ではラインナップされなかった。欧州仕様として販売されるという話を聞くが、開発コストを回収できるような台数かといえば難しいんじゃなかろうか。欧州の場合、エンジン搭載車の販売禁止まで秒読みに入っている。
圧縮着火エンジンは今後どうなるだろう? マツダ関係者に聞いてみたら「社内でも最初から商品としては厳しいという声が出ていた」と言う。
冷静になって評価すると、
1.燃費は5%いいけれど、リッターあたり11円高いハイオク仕様のため大差なし
2.プレミアム感やスポーティさを出すことも禁止されていたため、商品としての魅力が薄い
SKYACTIV-Xが絶版になるというウワサは当然だと思う。
■まだ伸びしろはあるはず!!
では、本当に絶版になるかと聞かれれば「そんなことない」と考えます。
圧縮着火エンジンはまだ性能向上の余地を持つ。最高出力が200psを超えてくるようになると、高回転域での伸び感だって出てくることだろう。そうなったらスポーティエンジンという位置づけにすればいい。
今や企業間平均燃費(CAFE規制)のため、高性能エンジン搭載が難しくなってきた。圧縮着火なら両立できる可能性を持つ。
例えば提案として、圧縮着火エンジンを搭載するマツダ3やCX-30のエクステリアを派手にしたり、車高アップなどして存在感を出したりすることで商品力の大幅アップができるのではないか。
20万円高くらいなら売れるだろう。地味なマツダ3ながら、アメリカでは直4、2.5Lのターボエンジンを搭載してヒットさせた。巨費を投じて開発したエンジンなので、簡単に諦めてしまうのはもったいないと思う。(TEXT/国沢光宏)
■SKYACTIV-Xが抱える課題
エンジニアと言われる人種は、許されれば誰もが目標を高く掲げて夢に挑みたいDNAを持っている。とは言うものの、世間はそんなに甘くないから、例えばコストの制約や商品性の課題など、現実の仕事では夢ばっかり語れない。
で、自動車メーカーでいえば、どのメーカーでも同じようなデザイン、同じようなメカニズムのクルマが造られることになる。
そんななか、どうもマツダにはちょっとほかの会社とはひと味違う、ある意味ヘソ曲がりな企業文化があるように見える。
そもそも、マツダが飛躍するきっかけとなったロータリーエンジンからしてそう。他社がすべて実用化を諦めるなか、粘り強く開発を続けて世界で唯一量産をモノにした。この強烈な体験がマツダの技術者に与えた影響は小さくない。
現代に至るまで「困難なテーマほど燃える」みたいなカルチャーが息づいているし、会社にもまたそれを許す風土があるように思えてならないのだ。
そんなマツダだからこそ生まれたのが、SKYACTIV-Xというエンジンだ。
ガソリンエンジン技術者の夢といわれたHCCI(予混合圧縮着火)という燃焼方式。同じ圧縮着火でもディーゼルは噴射ノズルから燃焼が始まるが、HCCIは燃焼室全体が同時に着火する。
理想的な状態でそれが実現できれば超希薄燃焼が可能だしノッキングも燃え残りも出ない。この「夢の燃焼方式」の実用化を目指したのが、SKYACTIV-Xだ。
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