ドライブなどで旧車に出会うと「小さいなあ!」と思うことはないだろうか。自動車の世界ではモデルチェンジのたびにサイズが大きくなり、気付けば車庫に入らなくなってた! なんてことが起こり得る。なんでクルマはデカくなるのか。原因を調べてみた。
文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ、日産、スバル、BMW、フォルクスワーゲン
■5ナンバーサイズ撤廃でデカくなった日本車
試しにカローラで考えてみよう。1966年にデビューした初代カローラセダンは全長3845mm、全幅が1485mmだった。一方現行モデルは全長4495mm、全幅1745mmだ。全長で650mm、全幅でも260mm大きくなったことになる。
こうした例はカローラに限らない。クラウンだって最初は全長が4.3mしかなかったし、VWの初代ゴルフは現行ポロよりはるかに小さかった。そもそも日本の軽自動車規格だって、2.8mという全長が3m、3.4mと拡大してきたのだ。
なんでこんなことになるのか。日本固有の視点で見れば、戦後の経済成長によって人々の暮らしぶりが豊かになり、同じ大衆向けのクルマでも、時代を経るごとに求められる広さが大きくなってきたという事情があるだろう。
日本にはもともと小型車という規格(いわゆる5ナンバー車)があり、全長4.7m、全幅1.7m、全高2m、排気量2Lに収まるクルマは自動車税が割安だった(1960~1989年)。
ところが大きさが1mmでもはみ出せば、たとえ排気量が2L以下であっても税額が8万円台まで高騰するというルールが海外メーカー(特にアメ車勢)から猛抗議を受け、1989年に寸法規程を廃止したという経緯がある。以降はサイズに関するタガが外れ、長く5ナンバー枠を守ってきたレガシィやカローラも、徐々に3ナンバーサイズへと拡大を余儀なくされたわけだ。
■過酷な衝突試験がサイズ拡大最大の理由
日本の事情は分かったが、世界的にクルマが大きくなっているのはなぜだろう。
最大の理由は、安全基準の厳格化だ。ご存じのとおり、いまや乗用車には厳しい衝突試験が課されており、その基準は年を追うごとに厳しくなっている。
正面衝突試験ひとつとっても、もともとは車両前面をすべて使うフルラップ衝突だけだったが、現実の事故実態に近づけるべくオフセット衝突(前面の一部分だけで衝撃を受け止める)が導入され、近年はムービングバリアを使った対向車どうしの衝突すら試されるようになった。
近年、過酷だと思わせるのはポール衝突試験だ。これは車体側面が電柱に衝突するケースを模したもので、クルマのBピラー付近に時速35km、衝突角度75°で直径254mmのポールをぶつける(JNCAPの場合)。クルマはフロアとピラー、ルーフ回りだけで強烈なエネルギーを吸収せねばならず、当初は車体がくの字に折れ曲がってしまうケースもあったという。
自動車メーカーはこうした過酷な衝突試験に対し、強度設計や素材の見直しなどで対応してきたわけだが、そういった解決策の一つに、ボディサイズの拡大があるわけだ。大きなボディがあれば鋼材の配置にも自由度が生まれるし、エネルギーの吸収ゾーンとしても利用できる。
たとえばスバル・レガシィは、2003年に登場した4代目から車幅が広がり3ナンバーとなったが、平均車重は逆に軽くなった。最大の理由は、側突に対する状況の改善だったらしい。それまで5ナンバーの車幅で受け止めるしかなかった側突エネルギーを、より幅広なボディで受け止められるようになった結果、強度設計の自由度が高まり使用鋼材が減らせたのだ。
コメント
コメントの使い方記事の通り大型化は安全のため。これに尽きます。二名をとりあえず移動させるだけなら小さくても可能で実際に私の旧車もそうですが
それは相手や歩行者の安全を最優先にしていないと重々承知してます。新しい安全な車が交通の大多数なため問題化してないだけ、ある種のタダ乗りでしょうね
ですから現行車も買って出来るだけ使うようにしてます。四名を安全・快適に移動させようと思ったら今のコンパクトカーサイズが最低限ですね