マジでスライドドア一本でいいのか!? 新型ムーヴの割り切りは大丈夫?

■キャンバスのネガ払拭!! 使い勝手大幅アップの予感

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ご覧の通りムーヴキャンバスはかわいらしいデザイン。そのため女性ユーザーが圧倒という状況

 新型ムーヴがスライドドアを装着する背景には、別の理由もある。ムーヴキャンバスは個性が強く、ユーザーによって好みが分かれることだ。外観ではフロントマスクは可愛らしく、リヤゲートも少し傾斜している。

 機能面では、ムーヴキャンバスの場合、後席の下に引き出し式の収納設備を装着する。

 これを引き出して、ついたてを持ち上げると、バスケット状になって買い物袋が収まる。シートの上に置いた時と異なり、走行中に倒れにくい。ただしこれは、誰にでも必要な機能ではない。

 この機能を装着したことで、後席の背もたれを倒した時、広げた荷室に段差ができる欠点も生じた。

 新型ムーヴは、このようなムーヴキャンバスの個性を抑えて、幅広いユーザーに馴染みやすく仕上げる。シートアレンジも同様で、後席を格納すると、一般的な平らな荷室に変更できる。

 ちなみにタントは、同じボディを使って、標準タイプ/スポーティ指向のカスタム/SUV風のファンクロスを用意した。新型ムーヴとムーヴキャンバスにも、同様のバリエーション展開が当てはまる。

■現行モデル比で大幅車重増!! スライドドアに全掛けは成功なるか!?

 販売店によれば「新型ムーヴには、標準ボディのLとX、エアロ仕様のGとRSがある」という。

 カスタムの名称は消滅するが、新型にも2つのボディが用意され、個性的なムーヴキャンバスのストライプスとセオリーを含めれば、合計4シリーズがそろう。

 そのすべてにスライドドアが装着されるわけだ。「ダイハツはスライドドアに賭けた」といえるだろう。

 「賭け」とされる理由は、スライドドアには欠点もあるからだ。まず横開き式ドアに比べると、操作に体力を要する。子どもや高齢者の乗り降りを考えると、電動開閉機能が必要だ。

 またスライドドアにはスライドレールが備わり、開口部も補強され、なおかつ電動機能まで加わると車両重量が増える。

 ムーヴキャンバスの車両重量は2WDの売れ筋グレードが880kgだから、現行ムーヴの標準ボディよりも60kg重い。

 この重量増加は、動力性能、走行安定性、燃費性能に良くない影響を与える。乗り降りに要する時間も、動作の素早い大人であれば、横開きドアの方が短い。

 そして電動機能を含めたスライドドアは、横開き式に比べてコストも高い。販売店によると「新型ムーヴの場合、標準ボディの中級グレードになるXが、左側スライドドアの電動機能、キーフリーシステム、プッシュボタンスタートなどを標準装着して、価格は141万9000円」だという。

 現行ムーヴの標準ボディに用意されるX・SAIIIは、キーフリーシステムなどの実用装備を充実させて129万8000円だ。新型ムーヴXは、スライドドアなどの装着により、現行型に比べて価格を12万1000円高める。

■イメージ一新はタント不振が最大の要因!? ムーヴ人気にダイハツの今後がかかっている

マイチェンでカスタムをよりド派手に。そしてファンクロスなるSUV仕立てのモデルを追加し巻き返しを図っているが……
マイチェンでカスタムをよりド派手に。そしてファンクロスなるSUV仕立てのモデルを追加し巻き返しを図っているが……

 以上の不利を承知で、新型ムーヴにスライドドアを装着した背景には、ダイハツの軽自動車の売れ行きも関係する。

 2022年のダイハツの軽自動車販売総数は、53万8974台でスズキの50万1339台を上まわったが、軽乗用車では逆になっていたことだ。

 2022年におけるダイハツの軽乗用車販売台数は、35万3753台に留まり、スズキの37万7605台に負けていた。つまり2022年におけるダイハツの軽自動車販売1位は、軽商用車によって支えられている。

 ダイハツの軽乗用車における敗因は、タントの販売不振だ。ダイハツでは軽乗用車のテコ入れが急務だから、新型ムーヴをスライドドアに変更する賭けに出た。

 幸いなことにタントがマイナーチェンジで売れ行きを盛り返して、今は軽乗用車もダイハツがリードするが、新型ムーヴはスライドドアで登場する。

 ムーヴキャンバスが、個性的な車種なのに好調に売れる理由は、スライドドアを装着するからだ。

 これが明らかになった以上、オーソドックスな車種として、新型ムーヴにスライドドアを装着する商品企画は納得できる。

 それでも横開きのドアで十分と考えるユーザーもいるため、今後はタフトの選択肢を増やす。今はSUV感覚の強いグレードだけをそろえるが、今後は落ち着いた雰囲気の特別仕様車なども加えていく。

 特に現行ムーヴは、価格を113万5200円に抑えたベーシックなLを設定するが、このような低価格グレードは、スライドドアを装着する新型ムーヴには用意できない。

 それがタフトの装備をシンプルに抑えれば、低価格の設定も可能だ。ムーヴはダイハツの主力車種だから、路線を大きく変えると、同社のすべての商品開発に影響を与えるのだ。

【画像ギャラリー】新型ムーヴの全貌を写真で!! かなりカッコイイぞ(9枚)画像ギャラリー

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