メルセデス・ベンツ車のテール部分などに貼られる「AMG」のバッジ。泣く子も黙る高性能モデルの証だが、このAMGモデル、メルセデスだけじゃなくて三菱車にもあったことをご存じだろうか? 自動車メーカーの離合集散が生んだ思わぬ三菱のレア車について、解説しよう!
文/小鮒康一、写真/三菱自動車、メルセデス・ベンツ
■わずか400台程度が販売されたデボネアAMG
AMGといえばメルセデス・ベンツのハイパフォーマンスモデルに与えられる冠で、現在はメルセデス・ベンツの子会社となったメルセデスAMGが手掛けているが、もともとAMGは独立したチューナーであり、メルセデス・ベンツ以外の車種を手掛けていたこともあったのだ。
それが1980年代後半に存在した三菱のデボネアとギャランに設定されたAMGモデルである。
これはAMGが独立系チューナーであった頃に三菱との業務提携で生まれたものであり、AMGがメルセデス・ベンツの子会社となった今では二度と生まれることがないコラボレーションとなっているが、今回はそんな三菱×AMGの異色の組み合わせモデルを振り返ってみたい。
まず先行してリリースされたのが1986年10月に登場したデボネアAMGだ。三菱のフラッグシップセダンであるデボネアは、1986年8月に2代目へとフルモデルチェンジを果たしており、それからわずか2か月後の追加であることを鑑みても、開発段階からAMGにアプローチしていたことは想像に難くない。
そんなデボネアAMGだが、カタログ上での正式名称は「デボネアV 3000DOHCロイヤルAMG」となっており、当時の最上級グレードである3000ロイヤルをベースにAMGがチューニングを手掛けたものとなっていた。
ただチューニングと言ってもエクステリアの変更が中心となっていたのだが、メッキ加飾モリモリでいかにも日本人が好みそうな高級感を纏っていたベース車に対し、AMGは極力光り物を排除。フロントグリルもボディ同色の骨太なデザインのものへと置き換えられ、前後バンパーも専用のものを装着。
さらにリアのガーニッシュもノーマルとはまったく異なるものがおごられており、小ぶりなリアスポイラーと専用のデュアル出しのマフラーと相まって、和風なデボネアがジャーマンスポーツセダンへと変貌していたのである。
このデボネアAMGでは、エンジンなどのパワートレインへのチューニングは一切行われていなかった。
しかし、純正の14インチに対して1インチアップとなる専用15インチホイールを装着するにあたり、サスペンションメンバーの補強やブッシュの硬度アップなどの変更がなされており、この辺りはクルマ作りに妥協のないAMGらしさを垣間見ることができた。
なお、デボネア自体は1989年10月にマイナーチェンジを実施し、3LモデルにDOHC仕様が追加されるとAMGのベース車もこのDOHCモデルに変更するが、このタイミングでAMGは受注生産へと移行。残念ながらそこまでの需要がなかったのか、前期後期合わせても400台ほどが販売されるに留まってしまった。
コメント
コメントの使い方1986年に登場した三菱 デボネアAMG。この頃はベンツもAMGもまだ「西ドイツ」の企業だった!……
とはどういう意味でしょう?ドイツに籍を置いてる会社という意味では今も変わらないと思いますが。
私もおっさんですが、おっさんの郷愁です。当時冷戦の真っただ中、ドイツは東ドイツと西ドイツに分割、東西ベルリンを隔てるベルリンの壁があった頃。時代は変わったなぁとしみじみと感じている訳です。