■エンジン内部まで手が加えられたギャランAMG
デボネアに続いてAMGの名前を冠したのが、1989年10月に登場したギャランAMGだ。これは1987年に登場した6代目ギャランがベースとなっており、マイナーチェンジのタイミングで追加されたもの。
ギャランと言えばターボエンジンに4WDを組み合わせた「VR-4」が知られるところだが、AMGのベースとなったのはこのVR-4ではなく、NAの2Lエンジンを搭載した前輪駆動モデルだったのだ。
このノーマル状態で140PSを発生する2L NAエンジンをベースに、高速型中空カムシャフト、冷鍛製チタン合金リテーナ、ステム細軸化、ポート径拡大、ピストン変更、触媒排気抵抗低減、プレミアムガソリン仕様化、排気系の見直しなどのチューニングを実施し、NAながら+30PSの170PSを実現。
ただこのエンジンの特徴はその出力ではなくフィーリングであり、カタログにも「テクノロジーと感性の融合」とあるように、非常に官能的な回転フィールを持つものに仕上がっていたのである。
なおこのエンジンのチューニング自体は三菱が実施しているが、その基となったエンジンは実際にAMG本社へ送られ、同社がチューニングを施したものがベースとなったと言われている。
またエクステリアは前述のデボネアAMGと同じく、派手さはないものの、凄みと纏まり感のあるエアロパーツなどによって大人のスポーツセダン風に仕上がっていた。
インテリアもAMGが仕立てたシートに本木目を使用したドアパネルとシフトノブを装着するなど、どことなくメルセデス風味を感じる仕上がりとなっていた。
このように非常にツウ好みな仕上がりとなっていたギャランAMGではあったが、インパクトという面ではやはり4WDターボのVR-4には及ばなかったようだ。
1991年にはAMGチューンはそのままに、エクステリアのみをVR-4と同等にした「AMG タイプII」もリリースするが、残念ながら「ツウ好み」という範疇を抜け出すことはできなかった。
このように残念ながら商業的に成功したとは言い難い三菱とAMGのコラボモデルではあるが、もしこのまま両社の関係が継続していたら、ランサーエボリューションAMGやアウトランダーPHEV AMGといったスペシャルなモデルが存在していたかも知れず、そっちのルートに分岐した未来も見てみたかった感もある。
ただそうなると日産やルノーとのアライアンスもなかったかもしれず、そうなると新型アウトランダーPHEVは生まれなかったかも……と妄想し始めると止まらなくなりそうなので、この辺で止めておこう。三菱のAMGモデルは、自動車業界の激流ぶりを物語る、貴重なクルマなのだ。
【画像ギャラリー】きみは三菱AMGを知っているか!? かつて存在したAMGチューンモデルのデボネア&ギャラン(12枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方1986年に登場した三菱 デボネアAMG。この頃はベンツもAMGもまだ「西ドイツ」の企業だった!……
とはどういう意味でしょう?ドイツに籍を置いてる会社という意味では今も変わらないと思いますが。
私もおっさんですが、おっさんの郷愁です。当時冷戦の真っただ中、ドイツは東ドイツと西ドイツに分割、東西ベルリンを隔てるベルリンの壁があった頃。時代は変わったなぁとしみじみと感じている訳です。