■新車販売縮小の背景には日本人の所得が増えなかったこととの相関関係が
この背景には、クルマの価格と所得の変化がある。クルマの価格については今は30年前に比べて大幅に上昇した。
例えば、1993年にはシビックなら5代目モデル(スポーツシビック)が販売されており、3ドアボディの人気が高かった。売れ筋グレードの3ドアVTiは、直列4気筒1.5Lエンジンを搭載して価格は154万7000円であった。
それが現行型シビックLXは、1.5Lターボを搭載する最も安価なLXでも324万600円だ。シビックの価格は30年前の2倍以上に高騰している。
1993年の2代目レガシィツーリングワゴンは、水平対向4気筒2Lターボ(EJ20ターボ)のGTが286万6000円であった。今のレガシィアウトバックは、X BREAKE Xが、1.8Lターボを搭載して414万7000円だ。現行型のターボエンジンは、30年前のGTに比べて排気量は小さいが、価格は1.4倍に増えた。
ミニバンでは、1993年には初代バネットセレナが売られていた。売れ筋グレードのFXは、直列4気筒2Lエンジンを搭載して206万円であった。それが今のセレナは価格が最も安い2LノーマルエンジンのXでも276万8700円だ。現行セレナの価格は30年前の1.3倍になる。
このように現在と30年前の価格を同じ車種の売れ筋グレード同士で比べると、ほかの車種も含めて、おおむね1.3~1.4倍に値上げされている。シビックの2倍は価格差が大きすぎるものの、クルマの価格は高くなった。
■値上げされたのは安全装備やADASが原因
値上げされた一番の理由は、安全装備や運転支援機能の充実だ。例えば、5代目シビックの安全装備を見ると、現時点で装着が義務化されている横滑り防止装置は設定がなく、先進的な運転支援機能はもちろん採用されていない。
運転席エアバッグは用意されていたが、VTiはオプション設定で、サイド&カーテンエアバッグは採用されていない。4輪ABSも同様にオプションだ。
さらにエアコンやアルミホイールなどもオプションで、今のシビックに比べると、装備は大幅に乏しい。VTiのメーカーオプション価格は、運転席のみのエアバッグが8万円、4輪ABSとトラクションコントロールのセットは16万円、エアコンのオプション価格は17万5000円だから、上記だけでも合計すると41万5000円だ。
このほかのさまざまな装備、さらに衝突安全性能、走行安定性、乗り心地の向上なども含めると、今のクルマの価格が高まるのも納得できる。
■所得は増えないのに、クルマの価格は上昇し続ける?
加えて消費税の違いもある。1993年当時は、消費税を含まない価格が示されていた。それが今は10%の消費税分を含む金額だから、本体価格が同じでも金額は大きく変わる。
1993年の200万円の車両は、今なら本体価格に消費税を加えた220万円で表示される。こういった点を含めると、1.3~1.4倍の値上げも納得できる。進化した機能や装備と価格のバランスで見ると、今のほうが買い得になった面もある。
それでもクルマの価格が高まったことに代わりはなく、その一方で所得は伸び悩む。所得の推移は、世帯別か個人かで少し変わるが、いずれにしてもピークは1990年代の後半だ。バブル経済の絶頂だった1990年を過ぎても少し増え続けた。そして今の所得は、1993年と比較して完全には回復していない。
つまり、1993年に比べると、今はクルマの価格が高まって所得は減った。これでは同じ車種に乗り続けるのは難しい。小さなクルマに乗り替えるユーザーが増えた。
この影響で前述のとおり、軽自動車の比率が1993年の24%から40%近くまで増えた。コンパクトカーやコンパクトSUVも多く売られている。その代わりミドルサイズ以上のセダンやワゴンは、世界的な人気低迷もあって売れゆきと車種を減らした。
コメント
コメントの使い方ワゴンRやセレナみたいな「1台で何でもできる車」がヒットして、タントやシエンタみたいな「小さくてスライドドアの付いた車」がシェアを伸ばした。見栄を張るために高級セダンを買う時代じゃなくなったんだよね。
価格で言えば、コスパをより重視するのがいいのかもしれません。例えば、ベストカーでも再三いわれているスズキ車とか。あとは、燃費や税金など維持費も考えなければなりませんし、買う側の妥協点を変化させていく必要もあるかもしれませんね。
消費税増税、経済の低下は大きな要因ですよね。ジャンルも変わり、車に求められるものが変わってきた今、大事なのは車そのものよりも国内の経済力なのかもしれません。
消費税10%は本当に大きい…