時代を20年先駆けすぎた!? スズキ ツインは今こそ乗るべきだ!

時代を20年先駆けすぎた!? スズキ ツインは今こそ乗るべきだ!

 交通エネルギーの削減や少子高齢化など、刻一刻と変化し続ける時代に合わせ、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足として検討が進められている超小型モビリティ。

 パーソナルな移動手段のひとつとして活用が期待されているものとなっているが、実は今から20年ほど前に、100%電動車ではないものの、非常に似通ったコンセプトの軽自動車が販売されていた。それがスズキからリリースされたツインである。

文/小鮒康一、写真/スズキ、ベストカー編集部

■コンセプトモデル時代から現代社会を予言していた!?

2003年登場のスズキ ツイン。コンセプトモデルの「Pu3コミュータ」では環境問題を意識した3種のパワートレインが用意されていた
2003年登場のスズキ ツイン。コンセプトモデルの「Pu3コミュータ」では環境問題を意識した3種のパワートレインが用意されていた

 2003年1月から販売を開始したツインは、その名の通り2名乗車の軽自動車だが、そのコンセプトモデルの「Pu3コミュータ」は1999年の東京モーターショーにすでに登場していた。

 スタイリングは市販モデルと比較すると、リアのクォーターウインドウの有無程度の差異しかなく、この時点ですでにデザインは完成していたと言っていいだろう。

 そして心臓部には3種類のパワートレインが用意され、660ccのリーンバーンエンジン、エンジンとCVTトランスミッションの間にモーターを配したパラレルハイブリッド、そしてEVシステムを搭載したゼロエミッション車と、この時点ですでに環境問題を強く意識したラインナップとしていたのだ。

 市販版ではEVモデルはラインナップされなかったが、近距離移動のパーソナルモビリティにはEVが適任ということを早くも感じ取っていたというワケだ。

 また翌年に開催された商用車ショーには、このPu3コミュータをベースとした福祉車両を展示。

 こちらは助手席側のドアをヒンジドアから開口部の大きなスライドドアに変更。助手席シートは横方向にスライドし、電動で脚部を展開・格納できる車椅子としたことで、シームレスに車両への乗降ができるようになっている点が最大の特徴となっていた。

 助手席大型スライドドアというとトヨタ ポルテが思い浮かぶが、ポルテは2004年デビューであるから、これもまたスズキの先見の明が感じられる仕様と言えるだろう。

■市販モデルのツインはどんなクルマになっていた?

コンセプトモデルに設定されたEV車は残念ながら市販版には採用されなかったが、市販軽自動車としては初となるハイブリッドモデルを用意していた
コンセプトモデルに設定されたEV車は残念ながら市販版には採用されなかったが、市販軽自動車としては初となるハイブリッドモデルを用意していた

 話を市販モデルに戻すと、2003年1月に登場したツインは、コンセプトモデルとほぼ同じスタイルでリリースされた。

 バンパーなどはコストを抑えるために無塗装樹脂となっていたが、フェンダーまでつながるデザインを採用して安っぽさを感じさせない秀逸なデザインとなっていた(のちに無塗装樹脂部分をシルバー塗装とする「カラーパッケージ」も追加)。

 車体後部もコンセプトモデルと同じくハッチゲートではなくガラスハッチが備わるが、そもそもラゲッジスペースもミニマムであるため、ガラスハッチのみでも十分事足りるし、開口部を少なくしたことでボディ剛性にも寄与。そしてもちろんここもコスト削減にもつながっている。

 その結果、エントリーグレードの「ガソリンA」では、車両本体価格が49万円という驚異の低価格を実現。ただこのグレードはエアコンやパワステが備わっていなかったのだが、後に追加されたエアコンパワステ付仕様でも65万円と、やはり圧倒的なコストパフォーマンスを誇っていた。

 搭載されるエンジンはガソリン車とハイブリッド車の2つのパワートレインでスタート。ただガソリンエンジンはリーンバーン仕様ではなく、ハイブリッドもCVTではなく4速ATとの組み合わせなど、微妙にコンセプトモデルとは異なる仕様となっていた。

 とはいえ、ハイブリッドモデルは市販軽自動車としては初の量産ハイブリッドモデルとなっており、そのインパクトは十分。

 エンジンとトランスミッションの間に最大出力5kWのモーターを搭載してエンジンをアシストする仕様で、バッテリーはバイクも手掛けるスズキらしく、二輪車用のメンテナンスフリーバッテリーをベースに改良したものを活用しており、そのバッテリーは決して広くないラゲッジスペースに設置されていた。

 このように小型モビリティとしては画期的なツインハイブリッドではあったが、価格が同等の装備を持つガソリンモデルに比べて50万円以上高額だったこともあり、販売は低迷を極め、ほぼガソリンモデルしか売れなかったと言われている。

 ただその辺りはスズキも織り込み済だったのか、初期のハイブリッドモデルは型式を取得せず、ガソリンモデルをベースとした改造車、つまり車検証上には「EC22S改」と書かれる扱いとなっていた(2004年1月に登場した2型以降は型式を取得している)。

*   *   *

 このように、コンセプトモデルの頃から小型モビリティの未来を見据えていたかのようなツインではあったが、登場したのがあまりにも早すぎた結果、3年弱の販売期間で1万台ほどしか売れないという憂き目にあってしまったのだった。

 確かにコンパクトなボディを持つツインではあったが、コンパクトなのは全長だけで全幅は一般的な軽自動車と同サイズ。

 そして同時期に販売されていたアルトのバンモデルはエアコン付きで60万円を切る価格となれば、同じ軽自動車で維持費に違いがないどころか、バンモデルの方が安いことも相まって、コストパフォーマンスを重視するならアルトバン一択になるのも致し方ないところだろう。

 つまり今後超小型モビリティが普及していくかどうかは、税制面などがどれだけ軽自動車に比べて低くなるのかがキーとなるというワケで、ツインは今から20年も前にそういった問題提起をしてくれたクルマとも言えるのかもしれない。

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