売れに売れたGRカローラ。令和の「羊の皮をかぶった狼」的なホットワゴンだが、なんと追加販売が決まった。しかもキッチリとチューニングも施されているというが、その内容が「ボルト」や「アルミテープ」などちょっと地味な印象。本当に変わるんかいな……ということで実走チェックです!!
文:国沢光宏/写真:西尾タクト
■550台の追加販売で買えた人はラッキーだ
最初の計画台数を売り切ったため受注を休止していたGRカローラながら、納車のメドがついたということから追加販売をすることになったという。台数は550台。2023年9月11日までに申し込んだ人の中から抽選になる。
GRカローラは、今や世界規模で人気になっているGRヤリスと同じ工数の多いGRの専用ラインで生産しており、精一杯頑張って550台ということらしい。
その際、初期型の開発後に出てきた改良点をいくつか入れるそうな。資料を見ると(1)ボディの締結ボルト(2)バッテリーのマイナスアース(3)ホイールアーチ内に隠れている小さな空力パーツ(4)アルミテープの4点。
納車済みのGRカローラも同じパーツに交換できる。激しく地味だし「そもそもそんなモンでクルマが変わるの?」とも思うけれど「まぁ試乗してください」だって。
結論から書くと「驚きました!」。自動車評論家を長年やっていると、同じクルマでも乗り心地や質感にバラ付きを感じることが少なくない。もっと言えば、同じ車種であっても生産年月が1年違うと「こんなシャッキリしたクルマだった?」と思ったりする。
改良前のGRカローラと改良後のGRカローラに乗ると、後者は「これ当たりだね!」と思えるレベルなのだった。
■バラつきをなくすクルマ作り
具体的に言えば、ステアリングフィールはコストの掛かった”ラックにモーター付けた上級モデル”のように素直だし、乗り心地の質感も微振動が消えた。さらにシフト時のエンジン回転数を合わせるための微妙なスロットルワークにも応えてくれる。
開発したチーフエンジニア坂本尚之さんと凄腕技能養成部の大阪晃弘さんに聞いたら「すべての個体を当たりにする技術だと理解していただければいいと思います」。
欧州車のクルマ作りって今回のような「バラつき」をなくすためのノウハウがたくさん使われている。実際GRカローラのハンドルを握り、コーナーやアンジュレーションや継ぎ目のある道を走っていると、よく出来た欧州車のような奥行きを感じます。
すでにGRカローラを持っているなら、ぜひ今回の変更点を自分のクルマに取り入れたらいい。ハッキリわかるくらい質感がよくなるだろう。
それぞれのタネあかし(効能)をすると、(1)の締結ボルトの強化は物理的なもの。締結力を大きくすることでシャッキリ感が出てくる。これ、ラリーをやっている時にサービスで増し締めすると明確にわかる。
自分のクルマの締結ボルトを前後2本ずつ交換すればOK。上手にトルク管理できるのなら、標準で付いているボルトを強度の上限まで増し締めすることで同じ効果を出せると思う。
(2)はアーシング。バッテリーからのアース端子を落とすシャシーの塗装を剥がし、ダイレクトに金属同士が接するように改良していた。これでスロットルモーターの反応など向上するという。アーシングがクルマの質感に大きな影響を与えることは、23年前の2001年に確認済み。以後、生産モデルもアースをキッチリ取るようになってきている。改良型GRカローラは手間も掛けてきた。
(3)は(4)との相乗効果によりフロントタイヤ回りの流れを変え、ステアリングフィールの”雑味”を取る狙いだという。正直なところ事前の説明では微妙過ぎて効果あるとは思えなかったが、このあたりを聞いてみたら「この2つでラックモーター式のようなステアリングインフォメーションが出ているということになると思います」。もちろん締結ボルトとの相乗効果もあるかもしれません。
今回の技術、普通のクルマにも使える。前述の大阪さんは「私はトヨタブランドのクルマも担当しています。GRで開発した技術をトヨタブランドにも採用することでトヨタ車の底上げができればいいと思っています」という。なるほど! 私のノアも締結ボルトの増し締めをしてみようかと思った次第。
【画像ギャラリー】GRカローラがボルトで激変?? そんなことで変わるかぁ? 試乗で見えたGRの真骨頂(4枚)画像ギャラリー
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