■ハイブリッド・エンジン車の市場規模は2013年頃の水準にまで後退
第3に、このテスラ的なクルマ(現地ではICV=インテリジェント・コネクテッドビークル、我々が言うSDV=ソフトウェア・ディファインドビークル)がすでに業界標準となりつつあるのです。日本車はガラケーのような過去の商品と見られ始めています。
例えば物理的なスイッチやレバーを排除し、スマートフォンと連携したテスラ並みのスマートコックピットが中国ではすでに大衆車で一般化しています。
今度は市街地でのレベル2+の高度自動運転機能(ADAS)の普及期が大衆車市場に訪れそうです。今後、数年間にわたってICV/SDVシフトが世界に先行して進む市場となるでしょう。
日本車メーカーは、中国パートナーのプラットフォームや技術を用いたNEV新製品を2024年から投入し始めますが、ギャップを埋めるにはかなりの時間が必要のようです。
第4に、伝統的なハイブリッドやエンジンの市場規模は2013年頃の水準にまで衰退し、日本車メーカーは生産能力の余剰に苦しみ、赤字経営に苦しむディーラーの構造改革が急務となっているのです。
中国の全需は2022年にピークレベルの2500万台近くに戻りました。しかし、25%を占めるNEV車を除いた伝統的なエンジン・ハイブリッド車の市場規模は逆に2013年レベルまで衰退しました。
過去10年で生産能力を2倍近く増強したグローバルブランドは著しい能力余剰に苦しみ、工場稼働維持とディーラー/サプライヤー防衛に向けた価格競争は構造的で収まる気配が見られないのです。
「4S店」(「Sales(販売)」、「Spare Parts(部品販売)」、「Service(アフターサービス)」、「Survey(情報提供)」)でプレミアムなサービスを展開してきたグローバルブランドのディーラーネットワークが弱体化し、著しく多くの店舗が赤字経営に追い込まれています。
■中国だけでなく新興国市場も奪われる
中国ICV/SDVの進化は間違いなく世界市場をリードする見通しです。
日本車メーカーが先進国向けに開発したグローバルモデルを中国合弁会社に投入し、高い価格とブランドプレミアムを享受してきたビジネスモデルは終焉しました。中国専用のSDVを、現地開発で可及的速やかに進める必要があります。
慢性的な供給過多を構造問題に抱える中国SDVは、欧州に留まらず世界のグローバルサウス(新興国)へ侵攻を強める公算大です。
日本車メーカーが中国国内で中国SDVに対抗する力を持ち、戦いの前線を防衛できなければ、東南アジア、豪州、中南米、北アフリカの新興国市場を失うドミノ倒しとなりかねないのです。
中国における戦いは、もはや中国事業だけの意味合いを超えた次元で考えていかなければならなくなっています。
●中西孝樹(なかにしたかき):オレゴン大学卒。1994年より自動車産業調査に従事し、国内外多数の経済誌で人気アナリスト1位を獲得。著書多数
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