■エンジンはV6の2LターボとNAを設定
エンジンは、ブロアム系の3Lは採用せず、2Lエンジンのみを設定。日産初のセラミックターボを搭載したV6のVG20DETと、ワンカムの自然吸気仕様のVG20Eの2種類を設定。
基本はATだが、VG20E搭載車の1グレードのみ5速MTも選べた。グレード構成は、「グランツーリスモSV」と「グランツーリスモ」を用意。後に、特別仕様車の設定やグレードの追加も行っている。
展示車は1991年式の4ドアハードトップ仕様の「グランツーリスモSV」だ。1989年に改良を受けた後期型であるとともに、モデル生産終了年の最終型でもある。ボディカラーは、珍しいシルバー系の「イエローイッシュシルバーメタリック」なので、見る角度によってゴールド系にも感じる色味だ。
後期型では、搭載されるVG20DETエンジンは、ターボチャージャーの軸受けがボールベアリングに変更され、インタークーラーも搭載。さらにガソリンがハイオク対応となるなどの進化から、性能を大幅に向上。
最高出力210ps/6800rpm、最大トルク27.0kgm/3600rpmとなった。ATも、従来の4速から新開発となる乗用車向け世界初の5速ATに。この頃には豪華装備の特別仕様車だった「グランツーリスモスーパーSV」が、カタログとして復活しているが、豪華な上級グレードであることには変わりはない。
■徳さんも元さんも高評価を与えたグランツーリスモ
デビュー当時のベストカーの記事を振り返ると、徳大寺有恒氏はこのグランツーリスモを「ローレルやスカイライン、ことによるとフェアレディZを含めた日産のFR車のなかで最もファンなハンドリングを持つ」と表現している。
そのページには、ド派手にテールスライドを決めるグランツーリスモの姿もあり、ドライバーを高揚させるスポーツGTに仕上げられていたことをうかがわせる。黒沢元治氏も、セドリック/グロリアのキャラクターが大きく変わったことに触れ、特に注目していたのが、VG20DET搭載の「グランツーリスモ」。
そのハンドリングを「その名のとおり、GTカーに仕上がっている。ハンドリングは、スポーツサルーンといっても過言ではない」という高評価。センターピラーレス構造によるボディ剛性の物足りなさなど問題点も指摘するが、全体的には素晴らしいとしている。走りに煩い男たちを満足させたのだから、当時としては凄いGTサルーンだったことが伺える。
■宿敵クラウンとは違った高級車のイメージ像を作り上げたY31
オーナードライバー層に支持された新提案の「グランツーリスモ」は、その後のセドリック/グロリアには欠かせない存在となったのは言うまでもないだろう。その影響は、宿敵クラウンにも及んだ。
日産の黄金期と言われる1980年代後半から1990年代に活躍したセドリックグランツーリスモは、当時の日産の勢いを物語るだけでなく、セドリックの「親父グルマ」というイメージさえも崩した。
まさに開発陣の発想転換と努力を感じる1台だ。その大人たちを魅了した、ちょっと危険なアダルトな雰囲気は今も健在だ。
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