■勝負に出たZR-Vも売れ行きいまひとつ……割高感も目立つ
そしてホンダは、2022年にCR-Vを廃止した後、同年の末にZR-Vを投入した。パワーユニットやプラットフォームはシビックと共通で、優れた走行性能が特徴だ。
ただし売れ行きは伸び悩む。2023年度上半期(4~9月)の1か月平均は1707台だ。
2018年に発売されたフォレスターと同程度で、ヴェゼルの半分以下に留まる。発売直後のSUVの売れ行きとしては著しく少ない。
ZR-Vの全長は4570mm、全幅は1840mmだからCX-5と同程度のミドルサイズだが、視覚的には全長が4500mmを下まわるカローラクロスに近い大きさに見えてしまう。
フロントマスクも個性的だ。CR-Vと違って3列シート仕様も用意されない。しかも価格は、売れ筋になるハイブリッドのe:HEV・Z・2WDが399万9600円だ。価格にも割高感が生じた。
■今やミニバンと軽のイメージに!!
結局のところ、ホンダのSUVで販売が堅調な車種はヴェゼルだけだ。売れ筋カテゴリーのSUVで、人気車が乏しいのは辛い。
そのために2023年度上半期のホンダの国内販売ランキングは、トヨタ、スズキ、ダイハツに続く4位であった。
しかも国内で新車として販売されたホンダ車の約40%をN-BOXが占めており、軽自動車全体では50%を上まわる。
そこにホンダで2番目の売れ筋車種になるコンパクトミニバンのフリードを加えると、70%前後に達する。
N-BOXが好調に売られる一方で、小型/普通車のテコ入れを怠ったから、ホンダのブランドイメージが「小さくて背の高い実用的なクルマのメーカー」に変わった。そのためにN-BOXとフリードだけが突出して多く売られるのだ。
■今の商品をテコ入れすべきなのに!! ヴェゼルより小さいSUV国内投入へ
そうなるとホンダは商品力の割に販売が低迷するヴェゼル、ZR-V、フィット、ステップワゴンの販売促進を図るべきだが、直近ではWR-Vを導入する話も聞かれる。
WR-Vは新興国向けに開発されたコンパクトSUVで、全長は4060mm、全幅は1780mm、全高は1600mmだ。既存のSUVに当てはめると、トヨタのライズよりは少し大きく、ヤリスクロスに比べると全長が短い。ホンダのラインナップでは、ヴェゼルよりもさらに小さなSUVになる。
WR-Vの価格は、おそらくヤリスクロスと同程度だ。ノーマルエンジンを搭載するベーシックな2WDのグレードは200万円前後、買い得グレードでも230万円くらいだろう。フリードと同程度の価格だから堅調に販売されると思うが、ヴェゼルやZR-Vのユーザーをさらに奪ってしまう。
つまりWR-Vを投入すれば、ホンダのブランドイメージは、ますますダウンサイジングされる。そうなるとステップワゴンやシビックを含めて、ホンダのミドルサイズ以上の車種は、今以上に売りにくくなるだろう。
今のホンダにとって大切なことは、先に述べたミドルサイズ以上の販売促進だが、実際の商品構成は逆の方向へ進んでいる。
今の時代、昔のようなスポーツカーのホンダであり続けるのは困難だが、変わり方があまりにも激しい。
これではユーザーが付いて行けない。SUVの売れ行きが増えず、N-BOXやフリードばかり売れる背景にも、国内市場に向けた戦略の乏しさがある。
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