2023年12月26日に創立90周年を迎える日産。長い歴史の中には順風満帆な時代もあれば、荒波へと漕ぎ出さなければならない多難の時代もあった。日産の歴史をおおまかに振り返りつつ、創立100周年、そしてさらにその先に向けての日産への期待と課題について考える。
※本稿は2023年11月のものです
文/佃義夫、写真/ベストカー編集部、日産
初出:『ベストカー』2023年12月26日号
■紆余曲折の90年
日産といえば、日本のモータリゼーションを進展させた日本自動車産業のリーダー企業だった。だが、日産ほど紆余曲折を経てきた自動車メーカーは、ほかにないだろう。
その日産が1933年の創立以来、今年で90周年を迎える。12月14日には、横浜のグローバル本社で「日産自動車創立90周年記念レセプション」を開催する。筆者にもこの90周年レセプションの招待状が届いている。
トヨタとともに20世紀の日本の自動車産業をリードしてきたのが日産である。むしろ、トヨタが愛知県豊田市を本拠としていたことで、首都東京の銀座(当時)に本社を置いた日産が日本車を代表したリーディング企業でもあった。
「販売のトヨタ」に対し「技術の日産」が、野球で王・長嶋のO・Nに比較されたT・Nのライバル関係のキャッチフレーズだったのだ。
しかし、次第に日産とトヨタの両大手のライバル関係は日産の凋落から1990年代後半には格差がついていった。それは日産が抱えていた労働組合問題が経営の混乱を招いた結果だった。
1990年代末、瀕死の日産は外資の仏ルノーとの資本提携に活路を求めた。ルノー・日産の日仏国際提携はその後、日産が三菱自工を傘下に収めてルノー・日産・三菱自工の3社連合に至っている。
だが、この3社連合は資本構成からルノーの傘下に日産(ルノーが日産に43.4%出資)、日産の傘下に三菱自工(日産が三菱自工に34%出資)という親・子・孫の関係であった。さらにルノーは、かつてルノー公団であり、現在も仏政府が筆頭株主という国策が絡んだ企業であることが微妙に連合の動向に影響した。
■ルノーとの関係が「対等」に
2023年11月8日、ルノーと日産は資本関係について、ルノーの日産に対する出資比率を15%に引き下げ、相互に15%ずつを出資する見直しが完了したと発表した。両社が対等に議決権を行使できるようになり、実に1999年以来、24年に渡る親子関係が対等に変わったのだ。
三菱自工を含む日仏3社連合は、ゴーンが支配したムリなグローバル拡大戦略のツケやコロナ禍による市場低迷も受けて2019年から3社ともに業績を悪化させて、この間、構造改革経営で立て直しに躍起となってきた。
日産、三菱自工、ルノーもこの2023年で業績を回復してのルノー・日産の資本関係見直しとなり、3社連合には大きな転機となる。
特に、日産にとって四面楚歌の内田体制スタートから4年が経過しようとするなかで、ようやく事業構造改革も実を結びつつある。
日産にとって創立90周年という大きな節目で次の100周年に向かう2024年からの10年こそ正念場となる。
主力となっている中国事業の立て直しなど多くの課題も抱えているが、ルノーのEV新会社「アンペア」にも日産は三菱自工とともに出資して3社連合を改めて強化して成長機会と捉えている。
ライバルだったトヨタは「この指とまれ」(豊田章男会長)と、日本連合へのグループ連携を強めている。日産がCASE時代の本格化へ「技術の日産」を最大限生かして3社連合をリードして生き抜く方向を期待している。
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