“ワークスじゃない”アルト
私に言わせれば、アルトのデザインは秀逸である。これは自動車のデザインの王道を行っている。
近年の軽やミニバンは、脱・自動車デザイン化をはかっており、「走る」という機能の表現をあえて放棄することで、従来の自動車とは別世界を構築し成功(?)している。
一方、アルトは従来の自動車デザインの範疇にあり、そのなかでしっかりとカタマリ感や踏ん張り感、前進感の表現に成功している。ヘッドライトのメガネ的な衣装もインプレッシブ!
アルトワークスは、それを古典的にエボリューション化している。それについても文句はないのだが、いかんせん、ここまで小さいクルマをこのように武装化すると、絶対的なもの悲しさみたいなものが浮き上がってしまうのです。
ちっちゃいケーキにろうそく30本立てたような。それはそれで微笑ましいのですが、素のアルトのほうが、このデザインの本来の良さがわかりやすい。
“タイプRじゃない”シビック
シビックタイプRの超古典的な満艦飾的スポーツハッチの作り方に対しては、批判の声もある。「いまどきまだこんなことやってんのか」とか、「いまどきこんなリアウイングはないだろう」とか。
がしかし、機能(=サーキットでのタイム短縮)の裏付けは確実にある付加物だし、このバリバリ伝説ぶりに郷愁をかきたてられる部分もある。私も「超イケてないタイプRが好き!」という感情を抑えきれない。
でも、素のシビックハッチバックを見ると、ああ、これくらいの素の武装感だったら気が楽だな、という思いにかられる。
タイプRに乗ってチンドン屋になるのも捨てがたいが、適度に戦闘的な大型ハッチバックにリボーンしたシビックに乗り、適度に張ったエラや控え目なリヤウイングに青春時代の夢を感じつつ、世の移り変わりと中高年になった自分にしみじみするのもいいんじゃないか。
このほのかな青春の香りを否定することは、私にはできません。
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