かつては、クルマを運転するにあたって、覚えておいたほうがいいドライビングテクニックがいくつかあった。シフトダウンを行う際にクラッチを2度踏みこむ「ダブルクラッチ」はその代表例だ。変速ショックを少なくし、滑らかな運転をするためのもので、かつてのMT車においては必須の操作だったが、いまでは知っている人も少ないのではないだろうか。死語直前のドラテク用語をいくつか振り返ろう。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_New Africa
写真:Adobe Stock、写真AC
タイヤがグリップするか確かめる「ソーイング」
雨や雪の降る日や、枯れ葉や泥が積もっている路面では、グリップが極端に低い場所がある。そんなとき、タイヤがちゃんとグリップするか、ハンドルの手ごたえを確かめるため、ステアリングを小刻みに操作するのがソーイングだ。以前は、タイヤの性能がいまほど高くなかったことから、グリップするかどうかを確かめるため、しばしば用いられた。
しかしながら、現在はサマータイヤのグリップレベルも向上しているし、スタッドレスタイヤも圧雪路や凍結した道にも強い製品が登場していることから、ソーイングが必要なシーンは以前ほど多くない。ただ、路面凍結が起こりやすい地域ではいまでも行われるようだし、雨が酷いときや摩耗が進んだタイヤを履いている際にも有効であるため、現代のドライバーであっても、知っておいて損はないだろう。
ドライビングに自信のある人ほど使いたがった「ヨーイング」
「ヨーイング」とは、クルマを上から見たとき、クルマが重心を中心に、左右方向に回転する動きの大きさのこと。コーナーでハンドルを切ったときに、ドライバーが思ったほど曲がらなければヨーイングが足りない(アンダー(ステア)を出すともいう)、思ったよりも曲がり込んでしまったらヨーイングが大きすぎる(オーバー(ステア)を出すともいう)、というような使い方だ。
「オーバーステア」や「アンダーステア」とは、本来はクルマのステア特性を表す言葉。クルマが開発される際、ヨーイングはクルマのポテンシャルに応じた車速で適切に出るように設計されているため、これらは単に、減速が足りていなかったり、急なハンドル操作によって思い通りにならなかっただけのことなのだが、中途半端にドライビングに自身のある人たちは、クルマのせいにしがちであったように思う。いまではほとんど聞くことはなくなった言葉だ。
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