日産のかつての名車「フーガ」はなぜ消えねばならなかったのか?

速さではポルシェを超えるも、販売には繋がらなかった2代目

 しかし2代目は、初代と比べ、まったく売れなかった。2009年11月に登場した2代目フーガ(Y51型)は、初代のスポーティ路線を継承しつつ、筋肉質なボディラインに生まれ変わり、インテリアも木目調もしくは本木目のフィニッシャー、鈍い金属調の輝きを放つ仕上げなど、高級車の王道を行く高い質感であったが、そもそものセダン不人気に加え、SUVやミニバンの人気爆発、輸入高級車の販売増加などによって販売は振るわず。

 トヨタがクラウンやカムリ、レクサスのセダン全般を続々とフルモデルチェンジし、セダンが生き残る道を模索する一方で、日産は有効な手を見出すことができず、2010年11月に追加された「フーガ HYBRID」(モデル名としては、北米市場向けのインフィニティ 「M Hybrid」)が、0-400m加速でポルシェパナメーラのタイムに勝る13秒903という記録を樹立して当時のギネス世界記録に認定され、「ポルシェを抜いたセダン」として一躍有名にもなったのだが、これも販売に繋がることはなかった。 

日産の余裕のなさによって、続けることが難しかった

 2代目フーガは、ビッグマイナーチェンジや定期的な一部仕様向上などによって、ブラッシュアップはされたものの、モデルチェンジはおろか、パワートレインの変更や改良も行われることはなかった。ハイブリッドの燃費は12.8 km/L(WLCTモード)という目を覆いたくなる数値で、2015年には、フェイスチェンジと同時に、INFINITI(インフィニティ)のエンブレムを与えるという珍事も。ごく一部の日産ファンが憧れていた、インフィニティバッヂにすることで、フーガにレクサスのようなステータス性をもたせたかったのだろう。

 フルモデルチェンジをする余裕がないなかでの苦肉の策だったのだろうが、批判が多かったことで、フーガをより苦しめる結果になってしまったように思う。燃費性能にしても、ダウンサイジングをした2.5Lエンジン+モーター、もしくは、エンジン縦置きe-POWERなどを投入できていれば、結果は違ったかもしれないが、日産としては、やりたくてもできなかったのだろう。

 新型クラウンシリーズのような大改革は、余力があるトヨタだからこそできること。ムラーノやティーダ、ラフェスタ、ノートなどとともに「日産リバイバルプラン」の一環として(初代モデルが)発表されたフーガだが、日産がここからリバイバルしていくには、フーガを続けていくことが難しかったのだ。

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 2023年10月にインフィニティが発表した「Vision Qeコンセプト」は、おそらくQ50(日本名スカイライン)の後継として登場するだろう。ただ、全長がかなり長いようなので、Q50(スカイライン)とQ70(フーガ)を統合した新たな後継セダンとして登場する可能性もある。

 セダンタイプの需要は、法人からはいまも一定数はあるという。アリアで得たデバイスと知見を用いて、日産らしく電動技術を駆使し、「英知を宿したモンスターセダン」として、高級ドライバーズカーとしてのフーガの魂が復活することを期待している。

インフィニティが2023年10月に発表したBEVのコンセプトモデル「Vision Qe」。全長が長く、フーガと同じEセグメントのモデルに見え、次世代のラグジュアリーセダンとしてふさわしい存在感がある
インフィニティが2023年10月に発表したBEVのコンセプトモデル「Vision Qe」。全長が長く、フーガと同じEセグメントのモデルに見え、次世代のラグジュアリーセダンとしてふさわしい存在感がある
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