86個の部品が1個に!? クルマの生産革命か? トヨタが次世代EVに使う「ギガキャスト」は何がどうスゴイのか?

86個の部品が1個に!? クルマの生産革命か? トヨタが次世代EVに使う「ギガキャスト」は何がどうスゴイのか?

 トヨタが2023年に発表した新たな生産技術「ギガキャスト」。一体成型によってクルマの部品を大幅に減らす技術だが、2026年投入の次世代EVで採用される。米テスラがすでに採用しているが、トヨタEV戦略の今後について分析した!

文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、トヨタ

【画像ギャラリー】トヨタが2026年に投入する次世代EVから採用される新生産技術「ギガキャスト」って何だ?(4枚)画像ギャラリー

■ギガキャストの新しさとは?

トヨタが2022年から試作を開始してきたギガキャスト。今や市販車レベル一歩手前くらいの品質になっている
トヨタが2022年から試作を開始してきたギガキャスト。今や市販車レベル一歩手前くらいの品質になっている

 トヨタは2026年発売の次世代電気自動車から「ギガキャスト」と呼ばれる”新しいクルマの作り方”を採用する。

 以前に紹介したとおり、bZ4Xのリアセクションで言えば、現在86の部材で構成され、33工程かかる。ギガキャストなら1部品&1工数。しかも成形には1秒以内。冷却して金型から取り出すまでの時間を含めたって2分! 

 ただ、弱点もいくつか指摘されている。以下挙げてみよう。

■1)事故時の修理ができない

日本のEVはテスラを見習うべきところはあるのか?
テスラモデル3。すでにテスラにはギガキャストが実際に採用されている

 すでにギガキャストを採用しているテスラは、事故も発生している。例えば、ギガキャストの右後方にダメージを受けた場合、一体構造のため修理できない。ギガキャストされたリアセクションを交換しなければならず、相当な修理代金になってしまう傾向。

 通常だと50万円の修理規模のダメージであっても200万円以上かかってしまう事故例が出てきた。

 この点、トヨタ関係者に聞いてみた。曰く、「事故に遭遇することは当然の如く想定しています。今までの事故例を検討し、ダメージを受けやすい場所はギガキャストの上に潰れることを前提としたパーツを装着する予定です」。

 アームや緩衝材を使うということ。アメリカでは保険料金の高騰を抑止するため衝突時の修理代金の規制をしているが、それより安価になるよう考えているそうな。

 すなわち「ギガキャスト本体にまでダメージが及ぶほどのダメージを受けたら、普通の構造でも全損に匹敵するような激しい事故だった」ということ。

 このあたりは顧客第一主義を社是とするトヨタと、新しいチャレンジをブランド力にしているテスラとの違いだと考えればいいと思う。トヨタはギガキャストをリアセクションだけでなくフロントセクションにも使う。

次ページは : ■2)材料の納入先が減る

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