■2)材料の納入先が減る
日本製鉄などは「金型に溶けたアルミを流し込むキャスト構造は、強度を均一にすることが難しいため、余裕を持たせた厚みにしなければならない。となると薄板を組み合わせて作るタイプのほうが軽くできる。コスト的にもそれほど安くならないだろう」と言う。
確かに鋳造は強度を均等にすることは難しいし、サスペンションの取り付け精度なども出しにくい。
実際、テスラはギガキャストを採用し始めた頃、生産段階において大量の不良品を出した。ただ、鋳造で均質な強度や複雑な構造にすることの難しさについてはトヨタは100も承知。
加えてテスラと違い、複雑な構造を持つ競技用エンジンなどの鋳造も手がけている。最初の試作金型こそ均等にアルミを送り届けられず、酷いバラツキが出たそうな。2次試作で大幅に改善。今や問題ないレベルのようだ。
材料コストだと従来構造が有利ながら、生産工程の少なさで充分以上にカバーできるとのこと。確かに33の工程が1になれば生産ラインだって短くなる。何より我が国は就労人口が激減中。求人を出しても集まらない。
むしろ工程の削減は材料コストより圧倒的に重要となりつつある。しかもカーボンニュートラルを考えれば、ギガキャストはアルミなので電力で再生可能。
■3)サスペンション取り付け位置とボディ表面のパネルを貼り付ける時の精度
これについても対策している。サスペンションについていえば多少精度が悪くてもしっかり調整できるようにすればいいし、ボディ表面もアタッチメントを介して取り付けることで精度を出せるという。
このあたりはクルマ作りのノウハウが生きる。外部から指摘されるような弱点は充分対応していると考えてよい。
ということで2026年に向け、その開発は佳境に入っていると考えていい。つい先日も高強度ボルトに代表される精度の高いボルトを生産している『メイドー』というメーカーがドイツの『エジョット』(特殊なネジを得意とするメーカー)と協業しましょうという約束をした。
前後のギガキャストと、バッテリーを搭載する中央部の締結方法は現在さまざまな検討をしているらしい。メイドーからすればエジョットが興味深い技術を持っていたということなのかもしれない。
3つのパートの締結は強度や作業容易性、コストが課題になっている。逆に考えれば、部品を供給するメーカーまで動き始めているということでもある。
唯一、気になるのがギガキャスト優位だと判明した際、取り組んでいないほかのメーカーは大丈夫なのか、ということです。
【画像ギャラリー】トヨタが2026年に投入する次世代EVから採用される新生産技術「ギガキャスト」って何だ?(4枚)画像ギャラリー
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