クルマのカタチはさまざまだが、大きく分けると丸いクルマと四角いクルマになる。では、乗りやすさという点で考えるとどちらが優れているのか? 各々の美点と難点を考えてみよう。
文/長谷川 敦、写真/スズキ、トヨタ、日産、フィアット、ホンダ、ルノー
■クルマのカタチは何で決まる?
そもそもクルマの形状はどこで決まるのか? デザイン優先や機能重視、あるいは内部構造の要求からくるものなど、いろいろな理由が考えられる。
貨物輸送を目的に作られたクルマは四角いものが多いし、趣味性の強いクルマは丸いシルエットのものがけっこうあったりする。
今回は乗用車のカタチを考えていきたいのだが、実は乗用車の形状にはバリエーションが多く、クルマの骨格ともいうべきプラットフォームが同じであっても“ガワ”は丸と四角、各々に個性を持つ場合もある。
外観のデザインに関しては人によって好みが分かれるところで、その外観が購入の決め手になることも多い。
では、乗りやすさを中心にした使い勝手という点ではどうだろう? ここからは丸いクルマと四角いクルマの特徴を見ながら比較していきたい。
■クルマの形状による違いは?
■丸いクルマのメリットとデメリット
丸いクルマのメリットは見た目でソフトな印象を与えることだが、今回の話題ではそこを重視しないので、あくまで機能面でのメリットとデメリットを考える。
丸いクルマの場合、万が一対人事故を起こしてしまった際に、人体に与えるダメージを減らせる可能性が高い。歩行者と接触した時に、ボディが丸いほうが歩行者への衝撃を“いなせる”率が大きくなり、結果としてダメージを少なくできる。
これはタンスの角に足の小指をぶつけてしまった時に死ぬほど痛いのと逆の理屈だ。
また、全体の大きさが同じであれば、四角いクルマに比べて丸いクルマのほうがボディの表面積が小さくなり、車体の軽量化や材料費のコストダウンにつながる。加えてボディの剛性を確保しやすいという点でも丸いほうが有利。
デメリットは、実際に運転する際にクルマの四隅までの距離感をつかみにくいこと。狭い路地を曲がる時に「まだ大丈夫」と思っていたらバンパーの先端をこすってしまった、などという失敗は丸いクルマのほうが起こしやすい。
四角い乗用車に比べて荷室の容積が狭くなりがちなのも丸いクルマのデメリットといえる。貨物用のクルマが四角いのにもワケがあるのだ。
■四角いクルマのメリットとデメリット
次に四角いクルマの利点と難点を見ていきたいが、基本的に丸いクルマの利点は四角いクルマの難点になり、積める荷物の量など、丸いクルマが苦手とする点を四角いクルマは得意にしている。
車両感覚のつかみやすさという点では、圧倒的に四角いクルマが有利。これは実際にクルマを運転したことある人には実感できるはずだ。ただし、車両感覚の把握力には個人差もあり、着座位置でも大きく変わってくるのは知っておいて損はない。
荷室だけではなく、運転席を含めた車内空間の広さも四角いクルマのメリット。丸いクルマは車体上部の幅が狭いことが多く、これが車内空間に息苦しさを感じさせてしまう。
四角いクルマのデメリットは、先にあげた対人事故の際に、衝突した相手のダメージが大きくなりやすいこと。もちろん、事故の状況はさまざまなので、四角いクルマだからといって必ずしも重大事故になるというわけではない。
コーナリング性能も四角いクルマの弱点になる。クルマのシルエットゆえに重心が高めになり、これがコーナーでの不安定さを招く。ただし、一般公道を走る際にそこまでコーナーを攻めることはまずないため、重心の高さを特に気にする必要はないだろう。
コメント
コメントの使い方