■トヨタ ランドクルーザー70
●どんなクルマ?
ファン待望のランドクルーザー70が、国内市場に再々登場だ。振り返れば、2014年の約一年限定復活劇を思い出す。ただ、あの時の70と、今回登場した70は別物のクルマだ。
丸目のヘッドランプでイメージ一新し、2014年モデルが4L、V6ガソリンで、新型は2.8L、直4ディーゼルを搭載。先進安全装備も充実。
以前の復刻版では貨物登録でトランスミッションはMTだけだったが、今回は乗用車登録のATのみという仕様だ。
●新車の販売状況
新型はカタログモデルになったのが、今回の大きなトピック。限定を気にせず、いつでもランクル70を注文できるはずだが、ランクル70の購入競争は熾烈だった。
販売方法は事前予約を受け付けず、発表日からの先着順か抽選としたディーラーが多い。転売対策として、残価設定ローン契約やリース販売を義務化するところも多数見られた。
抽選から漏れたユーザーからは「70欲しかったのに買えない」という声が、そこかしこから聞こえてくる。月販基準台数は400台。筆者は、「桁がひとつ足りないのでは?」と思ってしまった。
ディーラー販売ではすでに納期が2年を超えており、実質的なオーダーストップ状態。納期が短いといわれるKINTOでも、納期目途は2年以上となっている。
無事に契約できた人のなかでも、契約日が1日変わるだけで納期が半年ズレた、といった声も。明らかな需要過多(供給不足)の状態は、今後改善していくのだろうか。
トヨタディーラーで話を聞いてみたが、現時点で70が増産されるという話は出てこない。すでに国内割り当て分は、2年先の製造車両まで行き先が決まっていて、注文再開の目途も立っていない状況となっている。
また、この先の継続販売にも暗雲が立ち込めてきた。複数店舗のディーラー営業マンからは「2025年以降の継続販売も不透明な状況です」という悲しい話も出てきている。
一方KINTOでは、2年と言われている納期が短縮する可能性が高そうだ。しかし、ヘビーデューティのランクル70を、パーツ交換など使用環境が制限されるKINTOで手に入れるのは、ユーザーの楽しみを制限することにもつながる。
さらに、KINTOは契約満了後の車両返却が前提であり、所有しながら70を育てたいというオーナーの希望にも添えない。
今後、待ちきれず、キャンセルするユーザーが出てくることは充分予想できるが、それが供給不足の大きな改善に繋がることはないだろう。
一縷の望みは海外市場の急変程度か。海外需要が落ちていけば、ランクル300のように、生産余剰分が日本国内に回される可能性はある。これなら大幅な納期の短縮や注文再開がありそうだが、こればかりは神頼みの領域。「あったらいいな」くらいの思いに留めておくのが現実的だ。
今、私たちができることは「70が必要なところにすべて行き届くようにしたい」というトヨタの思いが現実になるように願うこと。そして2年後もランクル70が販売を続け、いつでも手に入れられるクルマになることを、ただただ祈るしかなさそうだ。
(TEXT/佐々木亘)
●ランクル70 主要諸元
・全長×全幅×全高:4890×1870×1920mm
・ホイールベース:2730mm
・車重:2300mm
・最低地上高:200mm
・最小回転半径:6.3m
・エンジン:2.8L、直4ディーゼルターボ
・最高出力:204ps/3000~3400rpm
・最大トルク:51.0kgm/1600~2800rpm
・トランスミッション:6速AT
・WLTCモード燃費:10.1km/L
・価格:480万円
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