2024年2月18日、東京都の離島である八丈島で自動車のイベントが開催された。日産・自動車大学校の若き学生整備士たちが無料で島民のクルマを点検するというイベントだ。塩害などで傷んだクルマも多いなか、学生たちはどのような収穫を得たのだろうか。
文/写真:ベストカーWeb編集長 塩川雅人
■島民にとってクルマは必需品
東京都に属する離島の八丈島は、7000人ほどの人口を誇る島だ。かつては新婚旅行やリゾートとしての需要も多い島だったが、近年もその豊かな自然などを愛する人が多い島でもある。
そんな八丈島は公共交通機関が充実しているわけではない。オンデマンドタクシーや路線バスなどの設定はあるが、やはり老若男女問わず自家用車の需要は圧倒的。人口に対してクルマの台数のほうが多いというデータもあるほどだ。
また島内には10以上の自動車整備工場が存在しており、車検なども基本的には島内で完結する。しかし多くの島民にとってのクルマは移動手段としての所有形態が多く、しかも激しい塩害もあるため消耗品として割り切っている人が多い。
10万kmオーバーの中古車を本土から仕入れてきて乗りつぶすケースも多く、さらにディーラーが存在しないことで日常点検の機会が希薄なのが島の実情だ。
そこで自動車ジャーナリストの国沢光宏さん、そして日産・自動車大学校が立ち上がり島民の皆さんが安心して愛車に乗れるよう愛車無償点検イベントを実施した。それが「ドクターKプロジェクト」だ。
■「ホイールナットが手で緩むんですけど」
八丈町役場にてイベントが始まると学生がアドバイザーとして参加した著者に話しかけてきた。「ホイールナットが手で緩むんです」。その顔は唖然としている。それはそうだ、さっき公道を使って会場まで走ってきたクルマのホイールナットが手で緩んでいるのだから。
調べてみればナットのはめ込みが甘く、締め付けトルクが正常にかかっていない状況。日常的に点検をする機会があれば「あれ、なんかおかしいな」という気づきがあるものの、島ならではの事情を考慮すると致し方ない。とはいえホイールごと脱落してしまったら悲惨な事故になるのは確実。キッチリと締め付けを行い危険を防げたことは大きな収穫だった。
また全体の9割以上の車両がタイヤの空気圧不足で、規定値から3割以上少ないクルマも多かった。八丈島は東京都の予算で道路が作られているため路面舗装などは本土とあまり変わらないのだが、山間部は勾配のついた線形でタイヤへの負荷が多い。
そんな道で空気圧不足となればブレーキ性能も落ちるし、トレッドが偏摩耗する。学生たちの点検でタイヤの不備を指摘されたオーナーにとっては、空気圧チェックの必要性を再認識してもらえただろう。
ちなみに無料点検で見つかった不具合などのアドバイスは学生がカルテにまとめているので、それをもって近隣の整備工場へ作業依頼ができる。イベント前に島内すべての整備工場へ先生方が訪問しておりイベントへの理解や賛同も得ているから、このイベントが整備工場と島民の皆さんをスムーズに繋げる一助になるきっかけになるはずだ。
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