愛車に選んだユーザーはもちろん、ユーザー以外のクルマ好きからも注目を集める希有なメーカー、マツダ。2024年2月初旬、2024年3月期の第3四半期決算が発表されたが、好不調はどうだったのか? いろいろと気になるところだ。
※本稿は2024年2月のものです
文/池田直渡、小沢コージ、写真/MAZDA
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
■社運をかけたラージプラットフォームが:池田直渡氏の視点
「マツダは大丈夫なの?」とたまに聞かれる。話を聞いてみると、どうもネットの話題を気にしているようだ。
CX-60の乗り心地の話とか、マツダファンが首を長くして待っていたロータリー復活でせっかく出たR-EVは、販売台数が見込めないMX-30ベースだとか。あるいはマツダだけではないが、日本メーカーが全般に中国で不調だとかの話である。
そんなネットの有象無象の話に一喜一憂しても仕方ない。上場企業は決算を発表しているのだから、決算を見ればいい。マツダは2月9日、2024年3月期の第3四半期決算を発表した。
○グローバル生産台数:92万7000台(対前年15%増)
○グローバル販売台数:93万台(対前年17%増)
○売上高:3兆5665億円(対前年32%増)
○営業利益:過去最高の2002億円(対前年83%増)
○2024年3月期通期見通し:通期見通し(営業利益2500億円)は2023年11月公表値から変更なし。すべての利益項目でマツダとして過去最高を見込む。第4四半期の経営環境の変化・影響を精査中。
ということで、言うまでもなく絶好調である。
数字も凄いが、それ以上にマツダにとってめでたいのは、社運を賭けたラージプラットフォームが北米でちゃんと売れたことだ。もちろんこれからも継続して売れてくれなくては困るので、今回の結果だけで喜んでばかりもいられないが、このローンチの年に失速していたら、この先の話も何もない。
ラージが売れたことで車両販売単価が上がり、これが過去最高利益の原動力になった。同時に、初代CX-5からずっと取り組んできた「高付加価値販売」あるいは「ブランド価値販売」の成功をも意味している。
マツダが10年以上かけて、コツコツと仕込んできた計画が、形になり、それが過去最高益という形で実った。誰にとっても未来のことはわからないけれど、マツダの今は少なくとも大丈夫としか言いようがない。
●マツダがもっと元気になるためには?
マツダの弱点は規模が小さいこと。部品や半導体不足、レアアースの確保にしても、大きい会社と真っ向勝負したら勝ち目が薄い。そのためにはトヨタとのアライアンスを上手く活かすことがポイントになってくる。トヨタにもっと食い込んでいくことが求められている。
■今後重要なミドル&スモールのクルマたち:小沢コージ氏の視点
オザワは経済評論家でもないのでマツダが企業体として心底元気なのかはわからない。が、商品軸で見ていくと個性的かつ元気なのは確かで、まず「営業利益過去最高」は円安やコロナ明けを差し引いても凄い。
なによりこの決算結果はクルマ好きから懸念されていた新ラージ商品群がまずまずなスタートダッシュをした証拠。国内のCX-60は販売で一時上まわってたCX-5に再逆転されたり、ボディサイズ的にもキツい。
ただその分、2023年に北米で出たCX-90は好調だし、2024年春追加予定のCX-70も期待大。電動化が叫ばれるこの時代「今さら直6&FRで勝負して大丈夫?」という揶揄にも負けなかった新商品群はマジで凄い。当初足硬問題なども勃発したが多少の失敗もあるさ!
フォードから離れた時に世界2%戦略(巨大シェアは狙わない)を打ち出したマツダ。独自プレミアム路線はまず成功だろう。
ただし今後重要なのはCX-60より下のミドル&スモール群で、まだ「真の4番バッター」の位置にいるCX-5の後釜が生まれてないこと。小さめのCX-30は北米でも頑張ってるが爆発的ってほどじゃない。本来SKYACTIV─Xが脅威の低燃費で「まだまだEV必要なし!」と叫んでほしかったが及ばず残念。
またマツダブランド導入の1番バッターとなったマツダ2は、大幅リニューアルでオシャレ雑貨路線に入ったのはいいが、欲を言えば全面改良で独自のコンパクトカーの魅力をもっと強く打ち出してもらいたい。
ただこの辺りはベンツやBMWも苦戦しており、どうにも味勝負のブランドは勝負し難い。結局、お金をかけず台数も狙えずの小さな高級車は作りづらい。逆に言うとそういう意味でデザイン勝負に出たマツダ2は正しかったとも言えるのかも?
かたやお金をかけずに内外装から走りまで味をよくしたロードスターや新ロータリースポーツ戦略にはびっくり。理想を追求し、ブランド価値を追求しつつ無難に稼ぐ。なかなかできないバランスではないかと!
●マツダがもっと元気になるためには?
今のマツダは少ないリソースのなかでいかにお金をかけずに手間暇と頭でブランドを作れるかの勝負。全面電動化の賭けはヘタすると会社を潰すし、個性で勝負しつつ理想に走り過ぎない。このサジ加減がキモ。激動の時代に長期安定なんてそもそも無理。いつもギリギリ勝負でいいのでは?
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