■所得変わらずクルマは値上げ!! 小さなクルマが売れるのは当然の結果
ホンダの国内販売を支える上位5車種の内、トップ4車のN-BOX、フリード、フィット、ヴェゼルは、軽自動車と全長が4400mmを下まわるコンパクトな車種だ。
フリードは2列シートも選べるミニバンで、フィットはベーシックなコンパクトカー、ヴェゼルはSUVだから、ひと通りのカテゴリーがコンパクトなサイズでそろう。
小さなクルマに乗り替えるダウンサイジングの流れに沿って、これらのコンパクトなホンダ車が売れ行きを伸ばし、今の台数格差に繋がった。
この背景には、最近のクルマの値上げもある。安全装備や環境性能が充実して価格が高まったから、ユーザーが購入するクルマのサイズを小さくしているわけだ。
例えば今から7年前の2012年に販売されていた先代ステップワゴンスパーダSは、価格が249万8000円だった(消費税は5%)。
現行ステップワゴンスパーダ・ホンダセンシングは285万2280円だから、安全装備の充実は歓迎されるものの、価格は約35万円高い。
一方、フリードに1.5Lのノーマルエンジンを搭載するGホンダセンシングは210万円だ。サイド&カーテンエアバッグやLEDヘッドランプなどをオプション装着しても233万円くらいだから、先代ステップワゴンスパーダSよりも若干安い。
つまり7年前に先代ステップワゴンを購入したユーザーが、新たにホンダのミニバンに乗り替えようとした場合、現行ステップワゴンでは予算が超過する。ピッタリなのがフリードになるわけだ。
一般的にファミリーユーザーがクルマを買おうとした場合、2000年頃までは価格の上限は200万円前後といわれていた。
従って1990年代の中盤に発売されたステップワゴンやCR-Vの初代モデルは、売れ筋の買い得グレードを180~200万円に設定していた。
それがフルモデルチェンジを繰り返す度に、安全装備の充実などによって価格を高め、近年ではファミリーユーザーの上限価格が250万円とされている。
7年前に売られていた先代ステップワゴンスパーダSは、ちょうどこの価格帯に収まった。カーナビや諸費用を加えても、多少の値引きがあれば、300万円以下で購入できた。
ところが現行ステップワゴンスパーダ・ホンダセンシングのように車両価格が280万円を超えると、予算も300万円を上まわってしまう。
これでは予算オーバーだから、必然的にダウンサイジングすることになり、フリード、ヴェゼル、フィットなどが売れ筋になった。
平均所得の伸び悩みもある。平均所得は1990年代の後半まで伸び続けたが、そこから下降に転じた。
最も平均所得が低かったのは、リーマンショック直後の2009年で、そこからは徐々に伸び始めたが今でも20年前の水準には戻っていない。所得が減ってクルマの価格が高まったのでは、売れ筋が小さなクルマに移るのは当然だ。
悲観的な話にも聞こえるが、ホンダが国内販売を維持する上で、今のラインナップは巧みな戦略であった。
仮にフリードやヴェゼルが用意されていなければ、ホンダ車のユーザーが他メーカーに流出したことも考えられたからだ。
N-BOXの好調で国内で売られるホンダ車の50%が軽自動車になったが、前述の小型車も好調だから、ホンダの国内販売順位はトヨタに次ぐ2位になっている(以下3位はスズキ、4位はダイハツ、5位は日産)。
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