2010年に登場した日産「リーフ」の初代モデルは、航続距離が200kmほどでした。それから13年が経った現在、2代目リーフの航続距離は最大456kmと2倍以上。バッテリーEVに搭載されるバッテリー性能は日進月歩で進化しています。
そんなバッテリーEVですが、購入するにあたり懸念されることのひとつに、下取り価格の低さがあります。エンジン車と比べて構成部品や消耗品が少なく、以前よりもバッテリーの劣化が小さくなったいまも低い傾向。はたしてこの傾向は性能向上が見込める今後も続くのでしょうか。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、MITSUBISHI、TOYOTA、LEXUS、SUBARU、MAZDA
「BEVへ高額査定は付けにくい」というのが買い取り店の声
2022年12月に日産はリーフの値上げを発表しました。40kWhのバッテリーを積んだ標準グレード(X)は37万1800円上昇して408万円に、60kWhのe+(X)は102万8500円上昇し、421万円から525万3600円となりました。補助金が出るとはいえ(2024年度の補助金は85万円)なかなかの高額車であり、顧客からすれば、できることならば高額な下取りを期待したいところです。
リーフの現在の中古車相場は、初代モデル(2010年~2017年)は税込18~160万円、2代目(2017年~)は40kWhが税込93~320万円、62kWhの「e+」が税込187~370万円。製造年式や走行距離の長短によって多少の差はありますが、3~4年落ち車になると相場はガクンと落ちる傾向。下取り価格はこれよりも低くなるため、BEVの下取りはかなり安いものとみられます。
そんなバッテリーEVの中古車相場について、中古車査定のプロフェッショナルである中古車買い取り専門店の担当者に聞いたところ、バッテリーEVの査定はとても難しく、ガソリン車のように走行距離でおおよその劣化度合いが予測できたのとは異なり、バッテリーEVは普段の充電方法が、急速充電か普通充電かによって、バッテリーの消耗度合いが違ってくるため、高額査定は付けにくいそう。
バッテリーの劣化度合いは、バッテリーセグメントのインジケーターで確認するそうですが、当然ながら顧客(中古車バイヤー)も知っていることであり、中古車オークションに出品しても、12セグメントの欠けが多いほど避けられてしまうので、仕入れ時の中古車査定は厳しくせざるをえないとのこと。「10万キロ走行でも機関良好!!」と謳えば売れたガソリン車と違い、バッテリーの劣化度合いが確認できてしまうバッテリーEVは、やはり不利といえます。
需要も低いため、BEVの下取りの安さはこの先も続く見込み
中古車査定の相場を左右するのは、需要と供給のバランス。いくら状態のいいクルマであっても、需要がなければ価値は低いままです。現在のバッテリーEVはまさにその状態で、劣化のしにくい良質なバッテリーを備え、魅力的な走りや乗り心地を提供していたとしても、欲しがる人がいない。なかには、バッテリー容量が6セグや7セグまで消耗しきったバッテリーEVを買い取り、外国へ輸出するバイヤーもいるそうですが、相場を押し上げるような需要ではありません。
今後、バッテリーEVの性能が飛躍的に向上したとしても、こうした傾向はこの先も続くと思われ、初代リーフが世に出た当時からいわれていた「バッテリーの劣化」という懸念はこの先もなくなることは無く、「安い下取り」は今のまま進行すると筆者は考えています。劣化しないバッテリーは存在しないからです。
日産の「アリア」や「サクラ」などが搭載しているリチウムイオンバッテリーは、8年間160,000kmの容量保証(正常な使用条件下において新車登録から8年間または160,000kmまでのどちらか早いほうにおいて、アドバンスドドライブアシストディスプレイのリチウムイオンバッテリー容量計が9セグメントを割り込んだ(=8セグメントになった)場合に、修理や部品交換を行い9セグメント以上へ復帰することを保証)がされていますが、これは視点を変えれば、容量減少の可能性はあるということ。この先、全く劣化をしないバッテリーが世に誕生すれば別ですが、それでもガソリン車の中古車査定の考え方には追い付かないと考えています。
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