車の人気度は、その車種の「総合的な魅力」で決まる。特定の機能や性能だけを高めても、売れ行きを伸ばすのは至難の業。
しかも、「最近は商品開発も煮詰まり、ライバル同士の差が付きにくい」と解説するのは自動車評論家の渡辺陽一郎氏。
そんななか、外観や機能の一部を変更したグレードが、売れ行きに弾みを付け、今までそこそこ売れていた車が、さらなる人気車に変貌するというパターンもある。
ちょっとの違いでブレイクした人気車、ヒットの理由は、商品力以上にその“戦略”に隠されている!
文:渡辺陽一郎
写真:編集部
ノート「e-POWERの追加で人気車から大ヒット車に!」
“付加価値”で人気を高めた車種の代表がノート e-POWERだ。
ノートは2012年に発売されて相応に売れていたが、2016年11月にハイブリッドの「e-POWER」を加えると、人気を飛躍的に高めた。
2016年1~6月の1か月平均登録台数は8596台だったが、e-POWERを加えた後の2017年1~6月は、1か月平均が1万4035台に達した。比率に換算すると1.6倍に増えている。
ノートの発売から4年も経過した段階でe-POWERを加え、売れ行きを伸ばした背景には、複数の理由がある。
まず、e-POWERの商品力が優れていることだ。
e-POWERでは、エンジンが発電機を作動させ、そこで生み出された電気を使ってモーターを駆動する。駆動をモーターのみが行うから、エンジン回転数が走行状態に左右されにくく、高効率な回転域を維持して燃料消費量を抑えやすい。
また、モーター駆動だから運転感覚が電気自動車に近い。加速は滑らかでノイズも小さく、アクセル操作に対して動力性能が機敏に立ち上がるから走りが力強く感じる。
さらに、「S」と「エコ」モードでは、アクセルペダルを戻すと同時に、駆動用モーターが減速エネルギーを使った発電を積極的に行う。
そのために駆動用電池の充電効率が高く、アクセルペダルを戻すと同時に強めの減速力が生じる。この制御により、アクセルペダルの操作だけで、停車まで含めて速度調節を自由自在に行える。こういった機能も低燃費と併せて注目された。
CMではハイブリッドという言葉を使わず「電気自動車の新しい形」と表現しており話題になった。
また、ノートe-POWERが好調に売れた背景には、最近の日産に新型車が乏しく、車種数を減らしていたことも挙げられる。
特に売れ筋カテゴリーのコンパクトカーでは、ティーダが生産を終えて、キューブの発売は2008年、当時設定されていたウイングロードも2005年と古い。
日産車ユーザーが、「乗り替える車種がガソリンエンジンのノートでは物足りない」と感じていたところに、走りが上質でアクセル操作も楽しいノートe-POWERが登場した。そこで日産車ユーザーも積極的に購入して売れ行きを伸ばした。
そのためにノートは、2018年の登録車販売ランキングでは1位になったが、メーカーの順位はトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位だ。
日産の売れ筋車種がノートやセレナなど一部車種に限られるから、たとえノートが販売1位でも、メーカーの順位は5位に下がってしまう。
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