【令和の大ヒット新法則】 「ちょい足し」でブレイクした人気車 4選

 車の人気度は、その車種の「総合的な魅力」で決まる。特定の機能や性能だけを高めても、売れ行きを伸ばすのは至難の業。

 しかも、「最近は商品開発も煮詰まり、ライバル同士の差が付きにくい」と解説するのは自動車評論家の渡辺陽一郎氏。

 そんななか、外観や機能の一部を変更したグレードが、売れ行きに弾みを付け、今までそこそこ売れていた車が、さらなる人気車に変貌するというパターンもある。

 ちょっとの違いでブレイクした人気車、ヒットの理由は、商品力以上にその“戦略”に隠されている!

文:渡辺陽一郎
写真:編集部


ノート「e-POWERの追加で人気車から大ヒット車に!」

日産 ノート/2019年7月販売台数:1万1044台。e-POWERの追加で今や押しも押されぬ登録車販売No.1に! すでに登場から7年目にも関わらず人気はむしろ上昇している

 “付加価値”で人気を高めた車種の代表がノート e-POWERだ。

 ノートは2012年に発売されて相応に売れていたが、2016年11月にハイブリッドの「e-POWER」を加えると、人気を飛躍的に高めた。

 2016年1~6月の1か月平均登録台数は8596台だったが、e-POWERを加えた後の2017年1~6月は、1か月平均が1万4035台に達した。比率に換算すると1.6倍に増えている。

 ノートの発売から4年も経過した段階でe-POWERを加え、売れ行きを伸ばした背景には、複数の理由がある。

 まず、e-POWERの商品力が優れていることだ。

 e-POWERでは、エンジンが発電機を作動させ、そこで生み出された電気を使ってモーターを駆動する。駆動をモーターのみが行うから、エンジン回転数が走行状態に左右されにくく、高効率な回転域を維持して燃料消費量を抑えやすい。

 また、モーター駆動だから運転感覚が電気自動車に近い。加速は滑らかでノイズも小さく、アクセル操作に対して動力性能が機敏に立ち上がるから走りが力強く感じる。

 さらに、「S」と「エコ」モードでは、アクセルペダルを戻すと同時に、駆動用モーターが減速エネルギーを使った発電を積極的に行う。

 そのために駆動用電池の充電効率が高く、アクセルペダルを戻すと同時に強めの減速力が生じる。この制御により、アクセルペダルの操作だけで、停車まで含めて速度調節を自由自在に行える。こういった機能も低燃費と併せて注目された。

 CMではハイブリッドという言葉を使わず「電気自動車の新しい形」と表現しており話題になった。

 また、ノートe-POWERが好調に売れた背景には、最近の日産に新型車が乏しく、車種数を減らしていたことも挙げられる。

 特に売れ筋カテゴリーのコンパクトカーでは、ティーダが生産を終えて、キューブの発売は2008年、当時設定されていたウイングロードも2005年と古い。

 日産車ユーザーが、「乗り替える車種がガソリンエンジンのノートでは物足りない」と感じていたところに、走りが上質でアクセル操作も楽しいノートe-POWERが登場した。そこで日産車ユーザーも積極的に購入して売れ行きを伸ばした。

 そのためにノートは、2018年の登録車販売ランキングでは1位になったが、メーカーの順位はトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位だ。

 日産の売れ筋車種がノートやセレナなど一部車種に限られるから、たとえノートが販売1位でも、メーカーの順位は5位に下がってしまう。

スバル XV「車高ちょい足しでインプレッサ越えの人気車に」

スバル XV/2019年7月販売台数:2610台。インプレッサをベースとしたクロスオーバーながら、その台数はインプレッサスポーツ(1319台)の約2倍と本家を凌ぐ人気車に

 最近はSUVの人気が高い。SUVはメーカーにとって都合の良いカテゴリーだから、車種が増えて売れ行きも伸びた。

 SUVの場合、エンジンやプラットフォームは、基本的に既存のユニットで済ませられる。居住性や積載性の優れたワゴン風のボディに、大径タイヤなどを組み合わせるとSUVになるから、開発が比較的容易だ。

 その代表がXVになる。インプレッサスポーツをベースに、ワイドなフェンダーを装着して最低地上高を200mmに高め、大径タイヤを履かせた。つまり派生車種だが、XVの売れ行きは、インプレッサ(スポーツ+G4)に近い。

 ちなみに、かつてのレガシィアウトバックは、ツーリングワゴンをベースに開発されるSUVだった。北米仕様には、セダンボディのアウトバックもあり、SUVの多様性を示している。

 フェンダーにホイールを縁取る樹脂パーツを付けて、大径タイヤを履かせれば、SUVになって堅調に売れるのだから、造る側には都合が良い。

 ただし苦労もある。XVのように最低地上高を200mmまで高めると、本格的な悪路に乗り入れるユーザーも増える。それに見合う走破力がないと、車両にダメージが生じるため、ベース車の状態から対応を図らねばならない。

 そのために外観をSUV風に変更しながら、最低地上高をあまり高めない車種もある。ノート Cギアは最も高い仕様でも155mm、アクアクロスオーバーは170mmだ。

 これでは外観がSUV風に見えず、売れ行きも伸びていない。XVは一見すると手軽に開発され、要領良く儲けられるオイシイ商品に見えるが、デザインまで含めて周到に計算されている。

 しかも価格が割安だ。インプレッサスポーツに比べると、9万円程度の価格差で最低地上高を拡大して外装パーツもSUV風になり、シート生地まで上級化される。XVは戦略的な商品だからこそ、堅調に売れているわけだ。

スペーシア「ギアの追加でさらに人気アップ」

スペーシア/2019年7月販売台数:1万2688台。昨年末にSUV風の「ギア」を追加。販売台数は前年同月比107.1%と向上している

 スペーシアは、全高が1700mmを超える背の高い軽自動車で、後席側のドアはスライド式だ。N-BOXやタントのライバル車で、2017年12月に発売された時は、ほかの軽自動車と同じく標準ボディとエアロパーツを装着するカスタムを用意した。

 一般的にはこの2種類のみだが、スペーシアは1年後の2018年12月に、SUV風のスペーシアギアも加えている。

 前述のXVはインプレッサスポーツに比べると最低地上高を高めて全幅も25mm拡大したが、スペーシアギアの最低地上高は標準ボディやカスタムと同じ150mmだ。

 ところがジムニーと共通性を感じさせる丸型LEDヘッドランプやフォグランプ、ボディサイドの下側に装着されたサイドアンダーガーニッシュ、サイドドアガーニッシュなどにより、SUVの見栄えを上手に表現した。

 加えて価格は割安だ。スペーシアカスタムに比べると、7万5600円の上乗せでエアロ仕様の外観がSUV風に変更され、なおかつルーフレールも追加装着している。ルーフレールの価格換算額が3万5000円相当だから、それ以外の外装は4万円程度で変更された。

 そのため、スペーシアの2019年1~6月における届け出台数は、対前年比で113%になった。スペーシアの発売は2017年12月だから、2018年は絶好調に売れて、対前年比も145%に達している。

 そうなれば2019年は下がるのが普通だが、スペーシアギアの追加で、販売台数をさらに上乗せした。スペーシアギアはいかにもスズキらしい、コストを抑えながら販売効果を高めた戦略モデルだ。

タント「ちょい足しの元祖!? 背を少し高めて定番の超人気車に」

タント/2019年7月販売台数:1万4520台。トールワゴンのムーヴ比で125mm程度背を高め、広大な室内空間を武器に大ヒット! 4代目の新型も3万台超の受注を集め、好調なスタートを切った

 今のタントはダイハツの主力車種だが、2003年に発売された初代モデルは、ムーヴの天井を高くした派生的な車種だった。

 2代目では後席側のドアをスライド式にしたが、初代は横開きで、全高はムーヴよりも約100mm高い1725mmであった。

 初代は現行タントに比べると特徴が乏しく中途半端に思えるが、天井は思い切り高く、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も、当時の軽自動車では最長の2440mmだ。

 後席を畳めば自転車を積めて、後席の床下には靴などが収まる収納設備も備えた。

 スライドドアを備えた2代目は2007年末に登場して、ほぼ同時にスズキからはパレットがデビューする。

 2011年には先代N-BOXが登場してヒット作になり、今では全高を1700mm以上に設定してスライドドアを備えた車種が軽乗用車の約半数を占める。

 初代タントは派生的な車種でも、大きなトレンドの礎を築いた。

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