日本のスポーツカー史に燦然と輝く型式名SA22Cことマツダ初代RX-7。このクルマのトピックはいろいろあるが、パワートレーン系でもすごいことをやった。日本のスポーツカーとして初めてLSDを搭載したのは、このクルマだったんだな!
文:ベストカーWeb編集部/写真:マツダ
■左右輪を繋いだクルマは曲がらない!
マツダ サバンナクーペの後継として、1978年に登場したマツダ初代RX-7(型式名SA22C)。オイルショックの嵐が吹き荒れ、スポーツカーは絶滅するんじゃないかと言われた当時の日本にあって、このクルマの登場は驚愕であり希望でもあった。
そんな初代セブンの偉業を書き連ねたら1冊の本ができちまうが、ここでは1つだけ紹介したい。初代RX-7は、日本のスポーツカーとして初めて、LSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)を採用したクルマなのだ。
「そもそもLSDって何よ?」という人のために説明したいのだが、そのためにはデファレンシャル(差動装置)とは何かを理解しなければならない。
クルマはカーブを曲がるとき、外側のタイヤのほうが内側のタイヤより長い距離を走る。言い方を変えれば、外側のタイヤのほうが内側より多く回転する。雪の日のタイヤ跡などを見ればお分かりだろう。
この現象は4輪馬車の時代から人間を悩ませてきた。右と左のタイヤを棒で直結すると、内側のタイヤが突っ張ってスムーズにカーブが曲がれない。
エンジンを積んだ自動車でも同じだ。左右輪を直結させてエンジンパワーを伝えると、カーブに差し掛かった時に内側のタイヤが外側のタイヤと同じだけ回ろうとするから、クルマが曲がりにくくなるのだ。
これを解決したのがデファレンシャルだ。その仕組みは複雑なので省略するが、まっすぐ走っているときは左右に等しくトルクを伝え、カーブなどで左右輪に回転差が生じたときだけ、多く回転するタイヤのほうへトルクを多く伝えるという、実に素晴らしいデバイスなのだ。
■初代RX-7のこだわりが現在のロードスターに生きている
ということで「デファレンシャルよありがとう。めでたしめでたし」といいたいところなのだが、クルマを速く走らせようとすると困ったことが起きる。
スポーツ走行では強烈な遠心力や縁石への乗り上げなどにより、タイヤの空転が起きる。ところがタイヤの空転を、デファレンシャルは「多く回転している=たくさんトルクが必要」と勘違いし、トルクを与え続け、しっかり路面に接地しているほうのタイヤの駆動力を奪ってしまうのだ。
いやー本当に長い前置きになった。まったくRX-7が出てこないが、ここでLSDの出番となるのである。
LSDとは改めて「リミテッド・スリップ・デファレンシャル」。つまりデファレンシャルの作動(スリップ)を制限(リミテッド)する機構のことだ。
具体的には空転するタイヤへのトルク配分を制限し、接地しているタイヤに前進する力を生み出すことができる。これを国産スポーツとして初めて搭載したのが、SA22C=初代RX-7というわけだ(一部グレードのみ)。
ちなみにこのとき搭載されたLSDは、栃木富士産業が手がけたもの。同社はその後GKNドライブラインジャパンと名前を変えたが、マツダはそのGKNと二人三脚で、今日までLSD開発を続けている。
たとえば最新のロードスターが搭載するアシンメトリックLSDもGKN製だ。
近年のLSDはトラクション(駆動力)確保と同時に曲がりやすさも両立した製品が増えているが、アシンメトリックLSDはブレーキング時にリアが不安定になる状況に着目し、ハンドルを切ってもLSDが効いて車体が安定するような仕組みを取り入れている。
スポーツカーの走りに大きな影響を持つLSD。もしLSDに目を向けることがあったら、日本車のLSDの歴史が初代RX-7から始まったことを、思い出してほしい!
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