トヨタの作る欧州車として、日本に輸入されていたアヴェンシス。国産モデルとは一線を画したスタイリングや乗り味は、独自のファンを作り人気を博した。しかしアヴェンシスは売り手側にとって、少し困った存在でもあったのだ。トヨタ営業マンを困らせたアヴェンシスのクセとは、遂に今回迫ってみた。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
■3代目で販路が増え、販売現場は困惑!?
アヴェンシスの誕生は1997年。欧州専売車としてスタートする。日本に導入されたのは2003年のこと。2代目となるT25型からだ。セダンとワゴンがラインナップされ、ネッツ店(旧ビスタ店)で販売されていた。
イギリスのダービー州バーナストンにあるトヨタモーターマニュファクチュアリングUK(TMUK)で生産され、日本へ輸入されていたアヴェンシス。
石畳やアウトバーンといった、日本よりも過酷な道で鍛え上げられた走行性能は欧州基準。ボディ剛性がとにかく高く、ステアフィールからドアの閉まる音まで、国産トヨタ車のそれを大きく上回っている。
2009年に終売を迎えるまで、当時の取り扱いだったネッツ店(旧ビスタ店)は、アヴェンシスを上手く売っていたと思う。
クルマの特徴をしっかりと把握し、「日本車とは違う」ということを、良いところから悪いところまで説明していた。
■大きな転機を迎えた2011年
いったん途絶えたアヴェンシスの販売だが、2011年に再開する。この時、アヴェンシスは3代目になっていた。生産地は変わらずイギリスのままで、パナマ運河経由で日本に運ばれ検査を受ける流れも変わらない。
ただし販売チャネルは大きく変わっている。先代を扱っていたネッツ店に加え、トヨタ店とトヨペット店での販売もスタートした。
国産トヨタ車とは違うことを明確にしていたネッツ店と、イギリスで作られていてもトヨタ車であり、国産モデルと大差ないと考えていたトヨタ・トヨペット店。
ここから、アヴェンシスの大クセに、販売現場が悩まされる日々が続くのだ。
■ええまじで?みんなのブレーキへの理解が薄すぎ問題
ボディ剛性が高く、走行性能はピカイチのアヴェンシス。当然、制動装置も走行スペックに合わせたものを装着していたのだが、ココが国産トヨタと大きく違っていたところ。
日本国内では、クルマのブレーキは鳴かないし、ブレーキダストもそこまで出ない。ただ、欧州車の場合は、低温時にブレーキが鳴くのは当たり前で、ホイールが真っ黒になるほどブレーキダストが出る。
この違いを理解して正しく説明しておけば大きな問題にはならなかったのだが、国産トヨタと変わらない説明でアヴェンシスを売ってしまうと、納車後からユーザーによるブレーキクレームに悩まされることになるのだ。
「朝一番で駐車場から出る時に、キーキーうるさい」「ホイールが真っ黒だ」というクレームが日常的に発生。さらに、ブレーキダストが多いということは、ブレーキパッドやローターの消耗も激しいということ。
車検時にブレーキパッドの交換等をお願いすると「もうブレーキダメなの?欠陥品じゃん!」といった意見までユーザーから飛び出してくるのだ。
トヨタ店やトヨペット店では、この事象が思いのほか営業マンやメカニックを消耗させた。顧客との不毛な折衝が増えていくと、次第にアヴェンシスは「売ってからが面倒なクルマ」というレッテルを貼られることに。
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