昨今のクルマは燃費がどんどん良くなっており、通勤などで毎日クルマを使っている方でも、前回いつ給油したか覚えていないという方もいますよね。
週末しかクルマを使っていない方であれば、なおさらのこと。2~3か月前かなぁ、なんて方も珍しくないでしょう。
燃費がいいのは、大変いいことではありますが、給油頻度が極端に少ないのは、実はあまりいいことではありません。
「ガソリンは腐る」と言われるのを耳にしたことがありませんか。
実際に、燃料は時間とともに劣化していきます。そして、エンジンに悪影響を及ぼしてしまうのです。
文:吉川賢一、写真:三菱、ホンダ、日産、トヨタ、ベストカー編集部
※ガソリンの賢い入れ方がわかる記事はこちら。
本当にガソリンは劣化するのか
結論としては、燃料タンク内のガソリンは、長期滞留によって劣化します。
燃料の品質については、俗にいう腐るという表現より、劣化の方が適正ですので、以降は劣化に統一して、また燃料は一般的なガソリンに限定して話しを進めます。
ガソリンは、炭素と水素の化合物である、炭化水素混合物です。すなわち、様々な性状(揮発性、粘度、引火点など)を持つ成分の集合体といえます。
長期間、ガソリンを放置すると、ガソリンに含まれるアルケンが、空気中の酸素によって酸化し、蟻酸や酢酸に変化します。これによりガソリンは、着色処理されたオレンジ色から褐色に変色し、酸性化によって、強烈な刺激臭を発生させます。

また、時間経過とともにガソリンの中の高揮発性成分が消失し、揮発しにくい高粘度成分だけが残留します。それによって、流動性が悪化、ドロドロ状態となります。
劣化は、どれくらいから始まるのか
ガソリンの劣化は、周辺温度や湿度、空気への晒され具合に大きく左右されます。高温で、常時空気に晒されるような劣悪条件では、3ヶ月程度の早期で劣化が始まってしまいます。

クルマの燃料タンクは密閉されてはいますが、1年も経つと劣化が始まり、変色と刺激臭が目立つようになります。さらに、2~3年後には流動性の悪いドロドロ状態になります。
私たちが、燃料タンク内のガソリンの劣化具合を、その色や臭いの変化でチェックするのは難しく、現実的ではありません。安全第一で考えるなら、半年以上放置したガソリンは入れ替えるべきでしょう。
ただし、ガソリンは危険物ですので、自分では行わず、専門家に任せてください。
劣化したら、何が起こる?
ガソリンが劣化すると、例えば以下のような問題が発生します。
- 1.ガソリンタンクや配管部などの、金属部の腐食の促進
- 2.揮発性悪化によるエンジンの始動不良や不安定化
- 3.流動性悪化によって、燃料配管通路や燃料フィルタ、噴射弁が詰まり、エンジンの作動不良や最悪の場合は破損
例えば、半年以上放置されたクルマでエンジンもかかったし、問題ないだろうと走り出してしまうのは、非常に危険です。
燃料系の詰まりは、時間とともに進行していくので、走行中に突然エンジンが停止し、エンジンが壊れるという事故につながることもあるからです。
PHEV搭載エンジンはガソリン劣化対策をしている

三菱アウトランダーPHEVでは、3ヶ月間エンジンを起動せず、外部充電だけでEV走行を続けると、自動的にエンジンを起動させ、タンク内のガソリンを消費する制御が組み込まれています。
最低でも15Lのガソリンを補給しない限り、エンジンの強制起動は解除されません。
このように、燃料タンクの長期滞留によるガソリンの劣化を防止するシステムが組み込むなど、自動車メーカーも燃料の劣化に対して対策をしています。
まとめ
食品のように賞味(使用)期限があるわけではないですが、燃料の劣化は、エンジン停止やエンジン破損など大きなリスクに繋がってしまいます。
クルマをそれほど使わない方は、満タン給油をさけましょう。水分が混入する恐れがあるので注意が必要です。
また、長期間クルマを使用しない場合は、あらかじめガソリンを抜いておくなどの対策も視野に入れましょう。