ロータリーエンジン。それは世界で唯一、マツダだけが量産していたエンジンで、ローターを用いて動力を発生する個性的なエンジンは小型軽量かつハイパワーで、スポーツカーにはうってつけであった。もしロータリーエンジンが存在しなければ、RX-7は生まれていなかっただろう。今回はそんなRX-7の3代目、通称”FD”についての当時の記事を20歳アルバイターがリバイバルしていく!
この記事はベストカー1992年1月号(著者は伏木悦郎氏)を転載し、再編集したものです。
■ロータリーの使い手、片山義実が語る!!
ロータリーといえば、この人しかいない! 昨年までマツダワークスドライバーの片山義美選手である。20年以上前、スパ24時間で日本人とロータリーエンジンを世界に知らしめた片山義美。
ル・マンでの活躍も記憶に新しいところだ。その「ロータリー使い」片山義美が、今回はこのニューRX-7をBCのために初テスト。果たしてニューRX-7は片山義美の五感に何を訴えたか?
「昔のRX-7は12Aでしたよね。乗ってても低速トルクが少なくて乗りづらかったんです。それから13Bになって排気量が増えたんですけど、まだ低速トルクが足りないなと感じていたんです。
高回転ではよかったんですけどね。とくに低速から中速へいくところ、2500回転から3000回転は私たちが乗っていても泣きどころでした。
それが今回のRX-7は低速のトルクも改良され、充分なエンジンに成長しましたね」
低中速域のトルク不足を改良したシーケンシャルターボエンジンに関しては、もうロータリーだからという観念はいらないと断言する片山選手。操縦性についてはこう証言する。
「旧型のRX-7はアンダーステアやオーバーステアがきつかったんですよ。その点、今度のRX-7は以前からのフロントミドシップを継承し、さらに徹底した軽量化をして旧型の泣きどころだったアンダーステアやオーバーステアを克服しています。これでRX-7は本来のスポーツカーだなと思えました」
旧型RX-7と比べて今度のRX-7はどうか。もっとも興味ある点についてはこう説明している。
「旧RX-7は筑波でマツダ社内の運転訓練で乗りました。そのときは、2速くらいの小さなコーナーだとアクセルを開けていくとオーバーステアになってしまいました。
ところが今回、新型RX-7で走ってみると、同じコーナーで同じ操作をしてもアンダーステアが出ず、完全になくなっている。とにかく、アンダーステア、オーバーステアが減ったことが今回のRX-7の最大の特徴でしょう。
もし、オーバーステアが出ても、本当の弱オーバーしか出ないクルマに仕上がっているんです」
今回のニューRX-7、最大のうりであり、スポーツカーの命のコーナリングの評価はどうか。
「コーナーでの挙動は、進入時は弱アンダーステアで、加速していくとニュートラルステアに変わってくる。まあ、基本的にはニュートラルステアだから、アクセルをラフに踏んでしまっても、安全に走れるね。しかもブレーキのフェードもずいぶんと向上していますね」
先発の日本を代表するスポーツカーであり、ニューRX-7のライバル、NSXとZはどうとらえているのか。
「そうだね。NSXはエンジンブレーキでコーナーに入ったとき、かなりオーバーステアが出るね。ちょうどFF車独特のタックイン、アクセルオフでフロントが巻き込むような傾向があった。
逆にRX-7の場合、エンジンブレーキで入っても、ぜんぜんないからコーナーの通過速度が速いと思う。Zに関しては、もう古い感じもするけど、ちょっと極端にいってみると旧旧型のRX-7と感じが似ている。
ふかせばリアが流れる。まあ、Zはエンジンが重いからかもしれないけど、アクセルに対して挙動が大きいようだ」
ニューRX-7は乗り手を選ぶのか? 片山選手は次のように印象を語っている。
「今度のRX-7は正直いって20代から50代という幅広く乗れるクルマだと思う。さっきもいったように、アクセルに対してのオーバーステアやアンダーステアが少ないから、誰が乗っても楽しめると思う。
また、初心者、ベテランの両方の人も楽しめるはずだ。初心者は安全に楽しめ、ベテランは奥の深いドライビングテクニックが楽しめる。そういう意味でも今回のRX-7はよくできたなと思う」
ズバリ結論はこうだ。
「谷田部と筑波を走って感じた。早速買いにいこうと思った。やはりここまでしっかりしたクルマなら乗らにゃいかんでしょう。ひさびさに買ってもいいクルマができたと思う」
片山選手のニューRX-7の評価は高い。きわめて高い。ロ―タリーとともに歩んできただけに説得力ある証言だ。次は気になる筑波と谷田部のテストリポートで紹介しよう。
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