軽自動車初のミドシップオープンカーであるビート。コンパクトで可愛らしい見た目は、街中で見かけたらつい目で追ってしまう。そんな可愛らしい見た目からは想像できない、ガチガチの走りができることも特徴的だ。今回この記事では、ビートの新車販売当時の試乗記事をリバイバルし、懐かしき過去を振り返っていく。
※この記事はベストカー1991年7月10日号(著者は竹平素信氏)を転載し、再編集したものです
■谷田部テストはもちろん、ジムカーナで先輩に挑む!
ビートの走りのキャラクターをチェックするのに、ジムカーナはかっこうのケースである。たまたまウェットだったが、スラロ―ムと中速コーナーを組み合わせたテクニカルコースを設定してみた。ここでは当然ながらビートの走りが表画化するハズである。
トライしてみると、ビートの驚くべきスタビリティの高さにビックリ。圧縮された寸法制限のミニカーで、しかもミドシップとなれば、ウェットのジムカーナは苦手のハズだ。ところが思いっきり攻めてみても、ミドシップ特有のシャープな挙動が全く見られない。
たとえば2速で限界コーナリング中、アクセルを急に戻したとしても、ちょっとやそっとではテールが流れようとしない。プッシュアンダーの姿勢からフロントヘの荷重移動により、ゆるやかなターンインで終わる。急激なヨーの変化を想像していたから、完全に肩すかしを食ってしまったというのが本音である。
だからミドシップを意識せずに、アクセルを思いっきり踏んで攻められる。駆動輪の安定性の高さは、テストに持ち出したFR、ミドシップ中一番であった。とにかく、ビートほど限界時の挙動がマイルドなクルマは他に存在しないといってもいい。
アクセルを思いっきり踏めるという点では、FFのアルトワークスもそうだったが、こちらはターボエンジンゆえにパワーアンダーが大きく、ビートよりはるかにシビアなアクセルコントロールが必要であった。
ウェット路に関しては、2WDの場合、ハイパワー/ビッグトルクは宝の持ち腐れになりやすいものだが、今回のテストではまさにその通り。ビートのNAエンジンは、その手ごろなパワーをついに発揮できたのである。
視界が広く、ドラポジからしてもパイロンとの距離感がつかみやすいというのもビートならではだ。これについては、アルトワークスもOKだが、ユーノス、MR2、NSXとなると難しい。
MR2、NSXといったミドシップ仲間と比べて、ビートの完成度はどうかだが、ミニという枠の中で仕上げたにしては文句なしに”すこぶる高い”と断言していい。
つぶさに走りをチェックすれば、トレッドを広くとれない(サスペンションアームを長くとれない)ことから、とくにフロントタイヤの接地性変化の多さが気になるが、ムダなスペースを一切省き、オーバーハングも限界まで切りつめたことで、ミドシップとは思えないコントロール性の高さを引き出している。
MR2はおろか、NSXもムダは多いのだ。そういう意味からして、ミドシップ3車の中でビートが一番のピュアスポーツといえるかもしれない。動力性能、コーナリングの限界性能からして、ウェットのジム
カーナでもMR2、NSXには及ばなかったものの、ビートは容易に好タイムを出せる。
NSXは持てるパフォーマンスを持て余してしまうし、MR2もターボ仕様はコントロールがシビアだ。テスト車はNAだったことで好タイムが出せたことをつけ加えておきたい。
走りも、ムードも、ビートは徹底してミドシップスポーツを演出している。しかもそのポテンシャルを100%引き出せるだけの造り込みがなされている。
ミニカーだとか、プアマンズNSXだとかは抜きにして、これぞピュアミドシップスポーツではなかろうか。この点、MR2はビートを大いに見習ってほしいものである。
オープンボディを持つユーノスと走り比べてみると、やはりミドシップとFRの走りのキャラクターがはっきりしている。
ユーノスはアクセルで姿勢を自在にコントロールできるという楽しさはあるが、ウェット路ではトラクション不足が見られ、ターンインのニブさも見られた。このあたりがタイム差に表れた。
同排気量のアルトには、やはり駆動方式のさが明確。FFゆえに攻めやすさではアルトの方が上。ターボパワーを上手にコントロールすることで、ビート以上のタイムが出せた。
しかし、ドライビングスタイルや歯切れの良さからして、ビートほどのスポーツ気分は到底味わえない。
コメント
コメントの使い方オーナーでもある黒沢光宏大先生は、AZ-1の記事など他ではビートを酷評していました。
しかしHONDAとかかわりも深い大先生、こうしてその車種の記事では徹底して褒める。他所では出すネガ意見の一寸たりとも垣間見せない。プロですね