2023年10月に「ローンチエディション」が登場した日産 キャラバン MYROOM。2024年の夏から、いよいよ通常モデルが販売を開始した。キャンピングカーではなく、あえて「マイルーム」を謳うが、テリーさんはあることが気になった!?
※本稿は2024年7月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト
初出:『ベストカー』2024年8月26日号
■このクルマには「アレ」が足りない!?
今回の試乗車が商用車の日産 キャラバンと聞いて「めずらしいな」と思っていたら、“マイルーム”という特別なクルマだという。
キャンピングカーではなくマイルーム。文字どおり、部屋のように過ごせて、寝ることもできるクルマだということらしい。
実は私、キャンピングカーの親善大使を任命されていたこともあるくらい、キャンピングカーには詳しかったりする。学生時代にはマツダ ボンゴを改造し、日本一周したこともある。
しかし、日産はこのクルマをあえて「キャンピングカーではない」と強調している。確かにキャンピングカーならもっとほかの作り方もあっただろう。
じっくりと室内を観察していると、納得できないところをいくつか発見してしまった。
まず、物入れが少ない。キャンピングカーではなく“マイルーム”だとしても物入れスペースは多いほうが便利だと思うのだが、少ない。「ここには物が入れられるよな」と思うような場所も、なぜか使われていない。
ルノー カングーなどは至るところに物入れがあるし、軽自動車も同様。国産メーカーはそうした工夫が得意なはずなのに、見た目のよさを重視しているのか、なぜかこのクルマは収納スペースが軽視されている。
一方で「こんな立派なものが必要なのだろうか?」と思うほど大きなテーブルが用意されていて、使うと左右端いっぱいまで広がるので動線が断ち切られてしまう。もっと軽くて、片側が空いているテーブルで充分だし、使いやすいと思うのだが、なぜなのだろうか。
さらにもうひとつ、ロールスクリーンを用意して、テレビや動画を観られるようにしていることにも違和感がある。「車内がシアタールームになる」というのが謳い文句のようだが、なぜアウトドアで自宅のような過ごし方をしたいのかがわからない。車内で大自然の動画を観るとでもいうのだろうか。
とまぁ、いろいろと気になる点もあるのだが、このクルマの最大の特徴である「車内にベッドを作って、そこで寝る」ということに関しては完璧だった。
こんなに快適に寝られるクルマはほかになく、撮影中、思わず「このまま天国まで連れていってくれ!」と叫んでしまったほど。“マイルーム”というコンセプトどおりの出来になっているということである。
■この部屋には、ミッキーは来てくれそうにない
非日常を楽しむこの手のクルマにはウキウキ感が必須だと思う。しかし、キャラバンマイルームにはウキウキ感、ワクワク感が不足していないか?と思ってしまう。事務所やビジネスホテル、マンスリーマンションなどの感覚に近く、ミッキーマウスがまったく似合わない空間になってしまっているのだ。
先日、ある若い女の子が自作のキャンピングカーを見せてくれた。そのクルマで恋人といろんなところへ旅しているというのだが、そのセンスのよさに驚いた。使い勝手はいいし、見た目もいいしファンタジーだしと、見事な出来なのだ。
もちろん業者でもなんでもない普通の女の子なのだが、もの凄くレベルが高い。おそらく、心から楽しんで自分の部屋を作っているからだと思う。
キャラバンマイルームは緻密な計算をしてスキなく作られていて、だからビジネスホテル感が出てしまう。ここから自分好みに改造する余地がなく、がんじがらめになっているのだ。こう言ってはなんだが「お役所仕事」のようである。「不便を楽しむ」という発想が不足しているのだ。
申し訳ないが、餅は餅屋ということで、この手の架装を専門にやっている業者さんに頼んだほうがよかったような気もする。そのアイデアと自動車メーカーの製造能力が組み合わされば鬼に金棒だろう。
あまり好きな言葉ではないのだが、このクルマには「遊び心」が足りないのは確かだ。ぜひ、次のチャレンジに活かしてほしい。
●日産 キャラバンMYROOM Launch edition(680万2400円・2.4ディーゼル、7AT)
グランドプレミアムDXをベースに作られたスペシャルモデル。2023年10月に「ローンチエディション」が登場し、通常モデルは2024年の夏から発売開始。
全長4695×全幅1695×全高1975mm、ホイールベース2555mm、車重1970〜2220kg。直4、2Lガソリンと2.4Lディーゼルターボを搭載し、ガソリンがFR、ディーゼルがFR&4WDを設定する。
【画像ギャラリー】これはどこのデザイナーズホテルだ!? 日産 キャラバン MYROOMでいつまでも寝ていたい!!(20枚)画像ギャラリー
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