アメリカはOKなのに日本はダメ!? [エクサ]国内だけ着せ替えが認められなかった衝撃のワケ

■徳大寺有恒氏はエクサをどう評価したのか?

ベストカー1986年12月10日号より。写真中央は主査の川村紘一郎氏
ベストカー1986年12月10日号より。写真中央は主査の川村紘一郎氏

 新しいエクサはスペシャルティカーの楽しみを広げているところに価値がある。スペシャルティカーという種類のクルマはまず、スタイルが美しく、スポーティだ。次にハイパワー、グッドハンドリングでドドライビングプレジャーを与えてくれる。

 この2つのためにスペシャルティカーは多くのクルマ好きに支持されてきた。しかし、エクサはこの2つに加えてオープンエアドライプを楽しめる。さらにクルマ自身の変身が万能で、ユーザーは気分とそれにともなった生活感を変えることができる。これは新しい価値を持ったクルマだと思う。

ワニのように大口を開けるハッチ。重量は25kg
ワニのように大口を開けるハッチ。重量は25kg

 たしかに相当大きなリアハッチをどこに置くんだ? という貧しい事情がこの日本にはあるが、これがアメリカ(まさにこのクルマはアメリカ向けに企画されたのである)であれば問題はなく、2種のハッチを取りかえることすらできるのである。

 エクサはカーデザイナーとスタイリストのひとつの案を生産というカタチで大メーカーが実現した。過去、この種の実験や提案は少なくはなかったが、実験と生産は根本的に違う。これを成功させたメーカー日産はその勇気を誉められてしかるべきであろう。

 エクサのスタイルは3種。基本はクーペとキャノピーというノッチバックとスポーツワゴン風な取り外し可のハツチを持つ。そしてルーフがTバーとして外れ、クーペ、キャノピーともにオープンになる。これで合計3種。クーペとオープン、キャノピーとオープン。ユーザーはこの2つの選択が可能だ。アメリカではクーペ、キャノピーの互換性があるが、日本では許されないのは残念。

エクサのリアシートは2マイルシート。つまり3.2kmほどの距離だったら乗っても平気という意味
エクサのリアシートは2マイルシート。つまり3.2kmほどの距離だったら乗っても平気という意味

 スタイルとしてはもう圧倒的にキャノピーが上。クーペはルーフが高く感じるが第一、バランスがよくない。エクサを買うならキャノピーにかぎる。そのキャノピーの横からのスタイルはとてもいい。このエクサで少しおもしろくないのがフロントで、こいつが平几。このフロントにさえをみせたらこのキャノピーは完全だったのに。

 キャノピーもクーペも、ハッチはガンメタルグレーにベイントされている。キャノピーはともかく、クーペは同色のほうがいいと思う。ボディカラーは明るいブルー、白、赤、ガンメタルグレー、シルバー。本当はイエローやグリーンもあっていいと思う。今のところガンメタルグレーか明るいブルーがいい。

 とにかく、このエクサ、キャノピーはアメリカンタッチで、デザインの遊びも随所にあり、楽しいフィールがおおいにいいと思う。

エクサのフロントシート。シートのデザインも新しさを感じる
エクサのフロントシート。シートのデザインも新しさを感じる

■1.6Lエンジンを搭載したエクサの走りはどうなのか?

 エクサのボディウェイトは1070㎏、1.6Lクラスとしては相当重い。だからせっかくのCA16DEエンジンをもってしてもシャープな切れ味のいい加速とはいかない。

 むろん、遅くはないが1.6Lとしては充分な加速だと思うが、ライバルのシビツクSiや力ローラFX GTよりは0〜100km/h、0〜400mのタイムは遅いかと思う。

 しかし、私はそのことはエクサにとって大きなハンデキャップとは思えないのだ。最近のCA16DEはすこぶるスムーズでキレ味のよいエンジンになっているからである。メ―カーは別にどこを変えたとは言っていないのだが、明らかに初期モデルよりいい。

 特に4500rpmあたりからレッドゾーンの7500rpmまでの吹け上がりの気持ちよさは「さすがに4バルブエンジン」なのである。シフトフィールは悪くないがセカンドとサードのステップ比が大きい。これがもう少し狭めればもっといい。

エクサクーペのカタログ
エクサクーペのカタログ

 とにかく、エクサのエンジンはスポーティで自然吸気エンジンであるゆえの感じのよさを持っている。エクサはもとよリパルサーベースだからFFである。

 逆にいえばFFだからこそこのレイアウトが可能だったといえる。そして、このFFのハンドリングはとてもよくしつらえてある。

 ステアリングを切る。じわっとロールが起こる。ノーズが曲がりはじめる。リアが効きはじめロールはいっそう深くなり、クルマはコーナーをハイスピードで駆ける。

エクサキャノピーのカタログ
エクサキャノピーのカタログ

 この一連の動作がとてもスムーズで気持ちがいい。タイヤサイズは185/60R14。そして適切なバネレートとダンパー、このコンビネーションでエクサはそのクラスらしからぬ大人びたコーナリングを示してくれる。

 逆にいうとこのクラスのスポーティカーとしたら機敏なほうじゃない。しかし、けっして鈍じゃない。私はこのエクサのフィールをいいと思っている。リアのネバリはなかなか執拗で容易に流れるものじゃない。

 しかし、フロントとのバランスがいいのでコーナリングスピードは高い。エクサのインテリアはその外観の派手なことに比べるとシックである。

 すでに登場のパルサー(特に4ドア)はインテリアがシックで私はとても好きなのだが、このエクサもツィーディなファブリックを使っている。

 濃いめのグレーのヘリングボーンを用いている。インテリアもデザインの遊びをやっているが、それでいて、このクルマが妙に子供っぼくならないのはこのシックなシート、ドアトリムによるものだろう。

エクサクーペ。今見ても色褪せない
エクサクーペ。今見ても色褪せない

 エクサはとても楽しめるクルマだった。オープンエアドライブはやはリクローズドボデイと明らかに違う世界をみせてくれた。

 エクサは少々高価なクルマである。1.6Lクラスとしては最高のプライスタッグがつく。ただ走るなら、エクサのボディバリエーションや重さは不要だろう。

 ただ、美しいだけなら他にも選択肢はある。しかし、けっこうよく走ってハンドリングもおもしろくて、しかもカッコよく、かつオープンも味わえるとなるとエクサしかない。

 別の言いかたをするとキャノピーは都会に似合う。しかし郊外でオープンが楽しい。どうだろうキャノピーの179万円、192万円は高いだろうか。

※        ※        ※         ※

 さて、エクサはいかがでしたか? こんな自由な発想のクルマはあまりないですよね。エクサでできなかった着せ替えをコペンが実現してくれましたが、このエクサこそが真の着せ替えグルマと呼ぶにふさわしいクルマじゃないでしょうか。特にキャノピーのデザインは今見ても色褪せてないと思います。

 中古車を探せばいいじゃないかといわれそうなので、大手中古車検索サイトを探してみると意外にもあるじゃないの。クーペが3台、キャノピーが2台もありました。クーペは138万~158万円、キャノピーは程度極上で379万円と高かったです。欲しいという人はぜひ!

【画像ギャラリー】画期的な着せ替えグルマ、エクサの写真をチェック!(13枚)画像ギャラリー

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