■交通弱者であることが免罪符にはならなかったケースも…
ただし、歩行者も大きな過失を問われることがある。
実例として、2017年に長野県で出された判決では歩行者の過失を10割と判断し、運転者側に過失はないとされたこともある。
夜間、51歳の女性が片側3車線の国道(道路幅30m)の中央分離帯から反対側へと渡ろうとしてクルマから見て右から左へ横断。その横断中に直進してきたクルマと衝突し、女性は外傷性くも膜下出血、外傷性胸部大動脈解離、左脛骨解放骨折などの大けがを負い、115日入院を含む約2年間の治療期間を要した。
歩行者は運転者の任意保険会社を通じた後遺障害の事前認定を受け、治療費などを含めて約1400万円の支払いを保険会社から受けていたが、保険会社の示談交渉で提示された金額に納得のいかなかった歩行者とその家族が裁判を提起。
そのため、運転者側にも弁護士がつき、本件事故を回避することは不可能であったと主張。
そして裁判所は運転者の責任をすべて否定、その判断材料は以下のとおりだった。
●事故現場付近の中央分離帯には高さが1.5ないし3.8mの樹木が立っており、夜間であるために樹木と樹木の間に人が立っていても「人と認識するのは相当困難」であったといえる。
●衝突場所付近には照明灯がなく、対向車線の道路側のガソリンスタンドの明かりで逆光のような状態になる。
●そもそも片側3車線という幅広の国道の中央分離帯に、横断しようとしている歩行者がいると予測することは困難である。
この判決は、運転者の過失をまったく認めなかった非常に珍しい裁判例だが、「歩行者は交通弱者」といっても、交通ルールを守らない横断は大きな過失となりえることは十分理解しておきたい。
そして、我々クルマの運転者は第一に交通法規を守り、安全運転に努めることはもちろんだが、歩行者であっても交通法規を守って自身の命を守ってほしい。
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