高騰が続いている中古車の価格。コロナ禍での新車の供給不足などによって中古車が見直され、需要が増えていることが原因とされているが、実は、それだけが理由ではないケースもしばしばある。
たとえばトヨタの人気コンパクトSUV「ライズ」がそう。実はいま、ライズの中古車相場が高騰しており、業者向けオークションでは、3年落ちのライズが、新車価格に限りなく近い価格で取引されている。ダイハツの不正による新車の生産・出荷停止の影響かと思われたが、原因は全く別のところにあるようだ。
文:吉川賢一/写真:TOYOTA
4年落ちがほとんど新車価格で取引されている
中古車の流通事情に詳しい自動車買い取り専門店の担当者によると、中古車相場が高騰しているのはライズのガソリン車だそう。
実際に、とある中古車サイトで、ライズの2020年式のガソリン車 Z 2WD、走行距離3万km以下、という条件で検索してみると、180万円~250万円の個体が多く、最高額はなんと290万円。290万円の個体は、メーカーナビやエアロパーツが装着されてはいたが、走行距離は2万kmといたって普通。2020年当時のライズZ 2WDの車両価格が税込205万円であることを考えると、4年落ちとなる中古車が、個体によっては新車時価格を大きく超えて販売されている。
相場高騰の要因は、ロシアへの輸出規制
前出の担当者によると、これにはロシア情勢が関係しているそう。日本で下取りに出された中古車は、国内市場で中古車として販売されることも多いが、一部は海外へと輸出されていく。アルファードやヴェルファイア、ランクルなどの人気車から、ミニバン、SUV、コンパクトカーなどジャンルを問わず、いろんなクルマがいろんな国へと輸出されていくが、もっとも多くの中古車が輸出されていくのがロシア。そのロシアへの中古車輸出が、ロシアのウクライナ侵攻によって事情が変わり、それによって、ライズの相場高騰がおきているのだ。
2023年8月、日本政府は、ロシアによるウクライナ侵攻への制裁処置として、ロシアへの中古車輸出に厳しい規制をかけた。規制の内容は、排気量が1900cc超の自動車(ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車)と、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車(EV)の中古車は、ロシアへ輸出することを禁じるというもの。
それまでロシアへは、コンパクトカーからミニバン、SUVなど雑多なクルマが輸出されていたのだが、この規制によって、排気量1900cc以下のガソリン車の中古車しか輸出できなくなった。これによって、この規制をすり抜ける排気量1900cc以下のガソリン車の中古車に需要が集中、ヴィッツやヤリス、ノート(先代)、フリード、ヴェゼル、レヴォーグなどのコンパクトカーが大量に輸出されていくようになったのだが、そのなかでいまもっともロシアで人気が高いのがライズだという。
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