2023年末におよそ1年3ヶ月ぶりに日本市場復活となったホンダ「オデッセイ」。復活登場したモデルは、終了前とあまり大きな変更はなく、2013年に登場したモデルであるだけに細かなところで古さが感じられ、500万円前後という高価格帯のクルマにしては地味な存在。販売も、月販目標台数は1000台に対し、実売もほぼ変わらずという、大きく失敗してもいなければ、目立つ動きもない状況と、かつては年間10万台規模という大ヒットを記録したホンダの名門モデルのこの地味な状況を、さみしく感じているファンは少なくないのではないのではないだろうか。なぜオデッセイはここまで凋落してしまったのだろうか。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:HONDA
■ステーションワゴンでもなく、ワンボックスでもない、新しい価値をもつモデルだった
1994年に初代モデルが登場した、ホンダ「オデッセイ」。多人数乗車モデルでありながら、ワンボックスカーとは異なる乗用車感の強いパッケージングと、ホンダらしいキビキビしたハンドリングなどが評価され、登場するや否や大ヒット。たちまちホンダの基幹車種に据えられたモデルだ。
セダンをベースに開発されたMPV(マルチパーパスビークル)という意味では、日産の「プレーリー」のほうが先駆けではあるが、オデッセイは、スタイリッシュなデザインやダブルウィッシュボーンサスペンションの搭載などによって、家族向けのモデルというより、パーソナルカーの要素が強かったことが、人気を獲得した要因だと考えられる。ステーションワゴンでもない、ワンボックスでもないというまったく新しい価値が受け入れられたのだ。
■ただ、さらに新しい価値を提供したミニバンたちの登場によって、人気は下降
しかしながら、1990年代後半にさしかかると、同社の「ステップワゴン」(初代は1996年登場)や日産「エルグランド」(初代は1997年登場)など、さらに新しい価値を提供するミニバンが登場。
両側電動スライドドアや、子供が立って動き回れるぐらいの広々としたスペース、シャシーの改良による運動性能の向上やハイブリッド搭載による燃費性能など、オデッセイのパッケージングでは実現が難しい部分に、多くのユーザーが関心を寄せるようになってしまい、多人数乗車モデルの人気はみるみるそちらに移っていってしまった。
それに伴い、オデッセイの主戦場は、北米や中国へと移行。主戦場が移行したことで、ボディサイズや装備は仕向地に合わせて大きく、そして豪華になっていき、また、個性だったダブルウィッシュボーンサスも廃止に。従来のオデッセイファンからすると、違和感を覚えるようなモデルへと変わっていってしまったのだ。
もちろん実際の走りは安定感があってとてもよいのだが、ファンからすると裏切られたような思いなのだろう。ミニバンとしての実用性においても中途半端だったオデッセイは、この変化でさらに人気が低迷してしまった。
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